脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
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ブルーベリーの森あづみのでは、ブルーベリーの栽培方法として「ブルーベリーど根性栽培」を採用しています。
ど根性栽培は、千葉県木更津市の江澤貞雄さんという方が提唱している栽培方法です。
江澤さんは、日本ブルーベリー協会の会長を務められており(2022年10月現在)、木更津市でもブルーベリーの協議会を作り、その栽培方法の普及など、積極的に活動されています。
私がこの栽培方法に出会った頃、今(2022年)から6、7年前だったと思いますが、私はまだ県庁で働いていました。
県庁近くのローカル本屋さんに立ち寄ったときに、たまたま江澤貞雄さんの著書「ブルーベリーをつくりこなす」を手に取ったことが始まりでした。
それから、数年で、今自分が「ど根性栽培」のブルーベリーを育てて、観光農園を始めているとは、その頃は想像もできませんでした。
「ど根性栽培」の紹介も含めて、振り返ってみたいと思います。
ブルーベリーど根性栽培とは
ブルーベリーの潜在能力を発揮させる
私が実践した「ど根性栽培」は、千葉県木更津市の「エザワフルーツランド」の江澤貞雄氏が提唱する、栽培方法です。
お話を伺いに千葉県まで行き、農園も見学させて頂きました。
江澤貞夫氏は、ブルーベリーのこれまでの常識と考えられていた栽培方法を見直して、植物本来の能力を最大限に発揮し、根をしっかりと張らせる「ど根性栽培」と称した、独自の栽培方法を提唱しています。
(従来のブルーベリー栽培の定説)
- 植え床にピートモス※1を多量に使用し土壌酸度(PH)の調整と排水性を対策する
- 頻繁な潅水(特に夏場)
- ノーザンハイブッシュ系品種中心の栽培
- 化学肥料で苗木の成長を促進
(ど根性栽培)
- 植え床にピートモスを使用しない※2
- 基本的に潅水をしない。※3
- ラビット・アイ系品種の積極的利用
- 肥料は少量の油粕のみ、苗木は剪定で成長を促す。
※1ミズゴケ類などの植物が堆積し、腐植化した泥炭を脱水、粉砕したもの。土壌改良材として用いられる。
※2ノーザンハイブッシュでは少量使用する。
※3株元の乾燥対策は、木材チップなどの有機物でマルチングすることを徹底し、乾燥を防止する。
ど根性栽培はブルーベリー協会のホームページでも紹介されています。
ど根性栽培の植え付け方法
草などを除去し植穴を掘る
植える箇所周辺の草を除去します。
この場所はオーチャードグラスという多年生の牧草が生えており、厚さ1~2cmくらいの根の層が面的に張っていました。
乾燥防止にもなりそうですが、苗周辺だけは表面の根などを除去しました。
草刈りはしましたが、トラクターなどによる耕起はしていません。
植穴を掘ります。
従来の農法のようにピートモスなどを入れて植床を作らないので、12cmポットの大きさだけ、林業用の鍬で掘ります。
穴の中の根なども取り除きます。
植える
植えつけて、しっかりと鎮圧します。
硫黄粉を散布
硫黄粉、水分を含むと硫酸になるので、汗をかいた肌などに触れると、炎症をおこしたりします。
少量ですが、風向きなどには注意して散布しました。
(製品名:土壌改革)
PH調整とイノシシよけのための硫黄粉を散布します。
1株あたり、お椀半分(約100g)程度です。
この場所は、PHが6.0を少し切るくらいだったので、Ph4.5前後になるよう想定し、施用しました。
ラビットアイ系の品種の場合、Ph4.3~5.3程度と言われていますが、実際には5.5~6.0くらいでも問題なく育つようです。
なお、ど根性栽培ですと通常はこの後、油粕お椀1杯を散布しますが、
江澤氏から助言を頂き、植える時期が少し遅いことを考慮し、栽培を始めた初年度は油粕の散布を行わないこととしました。
木材チップの敷設
乾燥を防止する有機マルチとするため、ペール缶4杯分(20L×4=80L)の木材チップを敷設します。
平坦に均すと、ほぼ10cm程度の厚さになります。
刈り取った牧草が結構あったので、さらに草マルチにして足しました。
植える作業よりもチップをペール缶につめて運搬する作業に時間がかかった印象でした。
その後は、草刈りはやりますが、灌水などはしないで管理していきます。
なるべく自然に即したブルーベリーの育て方をしたい
まだ、地方公務員だった頃、将来的に脱サラして農業をやりたい、果樹で観光農園をやってみたいと考えていました。
その当時、流行りつつあったのが、ポット式の養液栽培の栽培方法でした。
水はけのよいスポンジみたいな人工培地に最適な酸度に調整された液肥で栽培することで、ブルーベリーの原産地(北アメリカ)の環境を再現し、成長が早く、高品質のブルーベリーができる。
というものでした。
今は、当時よりも、もっと広まって、この栽培方法を採用しているブルーベリー農園はかなり多いのではないかと思います。
この栽培方法が解説されている本などにも、「日本にはブルーベリーに適した土壌は無い」という主旨の記述がされていたり、栽培経験の当時の無い私には、「ポット式の養液栽培しかうまくいく方法はないのでは・・・・?」という風に感じてしまっていました。
そのため、このような栽培方法が本当にできるのか、すぐには信じられませんでした。
なるべく自然に即したブルーベリーの育て方をしたい 」
まだまだ栽培方法で悩みつつも、経験を積みたいと思い、
県庁を退職後は、ブルーベリー栽培をやっている農業法人に就職しました。
養液栽培ではありませんでしたが、ポットと灌水設備の方法で栽培をしている会社でした。
灌水装置などの施設は、タイマーなどで自動化されているものの、意外とメンテナンスが必要なもので、水質にもよりますが、灌水装置が目詰まりをしたりと、日々メンテナンスに追われていました。
植物を育てているというよりは、施設に向き合っている時間が長く感じました。
あと、チューブに留まった、水の滞った臭いや、防草シート上に溜まった水の臭いが、個人的にはかなり苦手でした。
何のために県庁をやめたのか、よくわからなくなってきて、もう一度、原点に戻り、やりたい形を模索することにしました
エザワフルーツランドの見学で「ど根性栽培」に衝撃を受ける
前述のとおり、「ど根性栽培」の存在は知っていたものの、
実際に見たことがなかったので、ドキドキしながら江澤貞雄さんに連絡をとったところ、快く受け入れていただき、見学させていただきました。
著書の中に「山を切り開いて農園を作った」という記述がありましたが、千葉県の山だから、もう少し、低く、なだらかなのだと思い込んでいました。
実際に行ってみると、思いのほか、しっかりした急な山で、ここに広大なブルーベリー農園を作られたことは本当にすごいことだと思いました。
それ以上に驚いたのは、成木のブルーベリーの勢いでした。
これまで見てきたポット栽培の、小綺麗にまとまった感じではなく、生命力の大きさを感じました。
あぁ・・・私は、なるべくこの自然の力を感じたかったのか。
と思いました。
栽培方法のモヤモヤが晴れて、当時はまだ栽培農地がを探している途中だったので、水はけのよい黒ボク土に絞って、探していきました。
ど根性栽培1年目は成長は控えめ
1年目は、長野県安曇野市に農地をお借りできるようになったのが、春に入ってからで、実際の植え付けの作業に入ることができたのは5月の中旬に入っていました。
それでも、ギリギリ植え付けは間に合う時期で、土地の所有者の方や地元の農業委員会をはじめ、ご協力いただいた皆様には本当に感謝しています。
植えつけた時期は、すでに暑くなってきており、日の出ギリギリにつけるように、夜出発していました(当時は畑から70km離れた場所に住んでいました。)
植えつけ作業が終わったのが5月一杯でしたので、本来であれば適期ではなかったと思います。
それでも、植えつけたラビットアイ系ブルーベリー333本は、ほとんど枯れることなく、成長しました。
1年目の成長自体は、ゆるやかで、剪定をして、さらに小さくなってしまう始末でした(笑)。
2年目以降にグンと伸びる
この調子で3、4年目から収穫できるのか、とても心配でしたが、2年目以降からグンと伸び始めました。
とくに新梢(シュート)の成長は著しくなり、4年目からは私の背丈を超えるものも増えてきました。
3年目から大きいものは収穫することができ、収穫をしたものも、成長が鈍ることなく、4年目はさらに大きく成長し、収量がかなり増えました。
3年目、4年目に収穫したブルーベリーはとても美味しく、自分もお客さんも、とても喜んでいました。
これからもブルーベリーど根性栽培とりくんでいきます
ブルーベリーの「ど根性栽培」で4年目シーズンを終えました。
ラビットアイ系ブルーベリーのど根性栽培を主体としており、暖地向けと言われるラビットアイ系でも、長野県安曇野市穂高地区標高約620mでも、問題なく良好に育っています。
ラビットアイ系品種が主体なので、事例少ない寒冷地でのラビットアイ栽培という側面もあり、適した品種や収穫期なども手探り状態です。
引き続き江澤さんにもご指導いただきながら、少しずつそういった検証も進めていきたいと思っています。
栽培方法や、今の生育状態には本当に満足しており、今後成長の可能性もかなり感じています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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