脱サラ元地方公務員でブルーベリー農園やってます。神崎辰哉(かんざきたつや)《@ttykanz》です。
農業をやっている、脱サラの経緯、ブルーベリー農園のコンセプトなどは、下記のプロフィールページ又をご覧頂けるとうれしいです。
私がブルーベリー栽培で採用しているのは「ど根性栽培」と言われる方法です。
千葉県木更津市のエザワフルーツランドの江澤貞雄さんが提唱している栽培方法で、ブルーベリーがもっている本来の力を発揮させる栽培方法の一つです。
日本ブルーベリー協会のホームページや「ブルーベリーをつくりこなす(江澤貞雄著、農文協)」という書籍で紹介されています。
日本で栽培されている作物はアジア大陸からヨーロッパの原産地のものが多く、原産地の環境と同じ 土壌酸度(以下pHとします)が弱酸性~中性付近(pH6.5前後)の環境 を好む植物が大半です。
一般的に日本の土壌は弱酸性(pH5.5~6.0くらい)になっていることが多いので、野菜づくりなどでは、石灰資材を使用するなど様々な方法で調整します。
北アメリカ出身のブルーベリーは日本の中では少数派である「酸性土壌を好む植物」です。
一般的にブルーベリーの栽培に適するpHは
- ハイブッシュ系でpH4.3~4.8
- ラビットアイ系でpH4.3~5.3
と言われています。
ピートモスなどの酸性で排水性の良い土壌改良材を使用し「植床(うえどこ)」を作る方法が一般的です。
しかし、「ど根性栽培」でラビットアイ系のブルーベリーを栽培するときには、ピートモスなどの土壌改良材は使いません。かわりに硫黄粉を株元にまくことで、pHを調節します。
肥料散布などの作業と並行してブルーベリー畑の土の変化などを観察してみました。
ブルーベリー栽培は何よりも「水はけ」が大切
基本的に強い植物だけど水はけが悪いと枯れる
ブルーベリー栽培で最も大切なものは「水はけ」です。
一般的に多くの果樹では水はけが大切であり、昔から扇状地などの水はけのよい傾斜地が果樹地帯になっている理由でもあります。
その中でもブルーベリーは特に水はけに敏感です。
ブルーベリーが最初に日本に導入されたのが、水田の転換作物としてだったのが、不憫でなりません・・・水はけの悪い低地の水田の土はおそらくブルーベリーがもっとも苦手とする土壌です。
土耕、ポット栽培、溶液栽培など・・・・どんな栽培方法をとっても、「水はけ」がブルーベリー栽培において最も重要なポイントです。
土壌酸度が多少ずれていても決して枯れることはありませんが、水はけが悪い環境では根腐れなどにより簡単に枯れてしまいます。
なんとか枯れなくとも、根が不健康になり、地上部の成長不良や花(実)がつかないといったトラブルにより実を楽しむことができなくなったりします。
庭の赤土や水田転換地に無理に植えるのであれば、ポット栽培の方がいいような気がします。
「水やり」が必要かは栽培方法により異なる
「ブルーベリーには水やりが大切」と多くの書籍には書かれています。
ブルーベリーは根が浅い植物なので乾燥に弱いとか・・・・
ブルーベリーの根には根毛が無いので、水を吸収する能力が低く乾燥に弱い・・・
というのが根拠になっているようです。
しかし、実際には生育環境により根の発達は異なります。
水が不足気味になれば根はより深く張ろうとしますが、 植え付け時から水を多く与えていれば、根は深く張ることはありません。
ブルーベリーの原産地である北アメリカの一部は決して降雨の多い地域ではありませんが、地下水位の高い地域が栽培適地となっている場合が多いようです。
地下水位が高ければ、どの植物も根はより浅くなります。
水はけがよい環境である前提であれば、水やりに固執しなくても有機物などをマルチングして水分が保たれる環境を作ることができれば問題ありません。
実際に私が栽培しているラビットアイ系のブルーベリーは植え付け時も含めて一度も水をやっていません。
株元に木材チップで厚さ10~15cmの有機マルチをしているだけです。
長野県安曇野市は冬は冷涼ですが、夏は気温35度を超えることも珍しくありません。
湿度は低いですが夏は暑い地域です。
それでも、水はやらなくても問題ありませんでした。
地植えではなく、ポット栽培であれば、水分を保つことはできないので、基本的に水やりが必要です。
土壌の性質やマルチングの有無、栽培方法によっても水やりの必要性は異なるはずです。
また、森林などに生息するブルーベリーと同じツツジ科の樹木は、ほとんどが外生菌根という菌根菌と共生しています。ブルーベリーも例外ではなく「エリコイド菌根菌」という菌根菌と共生していることが知られています。
菌根菌は、菌糸を伸ばして、水分や栄養分のあるところまで到達し、植物に供給することができます。
根に根毛が無いのは、菌根菌により補完される機能なので「必要がないから」だと考えられます。
同じような現象はランの仲間にも見られます。
江澤さんの書籍にも記述がありますが、湿潤な環境を好むというよりは「ほどほどの湿度が好みで、乾燥を嫌う」というのがより正確ではないかと思われます。
ブルーベリーに適する黒ボク土だったが・・・
私が栽培している長野県安曇野市穂高地区は、山沿いに火山灰由来である「黒ボク土」が分布しています。
黒くてホクホクしてのが「黒ボク土」の名前の由来です。
最近の研究では、黒ボク土の生成には、古代の縄文人の植物の焼き払いなど人為的な要素が深くかかわっていることが知られています。
水はけがよい土壌であり、日本での栽培においては最も適している土壌です。
私の畑は2~3%くらいの緩傾斜なのでで「水はけ」の条件は十分にクリアできています。
しかしpHが6.5~6.7くらいであり、弱酸性から中性よりでした。
野菜を育てるには適していますが、ブルーベリー的には少しpHが高いです。
(植え付け時ではpHが6.5付近だった)
(簡易な測定機でもpH6.5付近)
(電気伝導度(EC)=0.09ms 窒素肥料分は少ない)
肥料の使用により、pHが変化することもありますが、窒素の指標である電気伝導度(EC)も下限値ギリギリくらいだったので、別の要因でpHが高いようです。
以前の耕作者に確認しても、5年前に化成肥料を少しやったくらいで、あとは何もしていない牧草地だったようで測定値とも整合します。
長野市での野菜の栽培(水田転換地の畑)の経験から、何も調整していないと、だいたい5.5~6.0くらいかと思っていたので意外でしたが、この地域は調節しなくてもそのくらいの値になることも多いそうです。
数値的にみれば多くの野菜の栽培には適するので、前の前の耕作者にも聞いた「野菜はいいのができた。」という話とも一致します。
土壌の母材になっている岩石も長野県穂高地域は火山由来の花崗岩であり、どちらかといえば酸性よりの地質です。
何故pHが高めなのかしばらく不思議でした。
最近になって、偶然、森林総研の研究資料を見たところ、日本の森林土壌に分布している火山灰土が硫黄分を固定しており、欧州なみの酸性雨が降っているのに極端な酸性に傾かないという報告がありました。
火山灰土由来の土壌は酸性になりにくい場合があるのかもしれません。
ブルーベリーに適した環境を作るためには土壌酸度はもう少し下げたかったので
植え付け時には、硫黄粉を一株あたりお椀半分(約100g)を散布しました。
今思うと、もう少し多く散布してもよかったかもしれませんが、この時点では、変化の様子も確認したかったので江澤貞雄さんの書籍の方法に忠実にやってみました。
ブルーベリーにより適する土壌に変化した
硫黄粉の散布から約9カ月ほどが経過しました。
土壌Phはだいたい5.5~6.0くらいになっていました。
火山灰土は硫黄を固定するから、酸性になりにくい・・・・という説と若干矛盾する気もしますが、森林に自然に供給される硫黄の、さらにもう少し長いスパンのことを言っているのかもしれません。
根を傷つけるおそれがあり株元の土は掘り出せなかったので、原位置で測定する簡易な測定器しか使えませんでしので、そのため、測定誤差も±0.5くらいは考慮する必要があります。
しかし、周辺に生えている植物などを観察してみてもスギナやギシギシ、スイバなどの酸性よりを好む植物が増えてきており、以前より酸性よりになってきていることがわかります。
(赤く葉が変色しているのがスイバやギシギシ)
特にラビットアイ系はpH5.5くらいでも問題なく育つので、概ねいい感じですが、ph4.5~5.0くらいを目指したいので、硫黄粉お椀半分(約100g)を追加散布しました。
私の畑は壌土に近く、散布範囲がだいたい1m2なので、100gまくとpHが1ほど下がっている状況からみて、理論値どおりに変化してきていることがわかります。
4.5~5.0付近を目指すには100gほど追加することが望ましいと考えました。
現在の土壌のpH | 砂土 | 壌土 | 埴土 |
4.5(目標) | 0 | 0 | 0 |
5.0 | 20 | 60 | 91 |
5.5(現在) | 40 | 119 | 181 |
6.0 | 60 | 175 | 262 |
6.5(植え付け時) | 75 | 230 | 344 |
7.0 | 95 | 290 | 435 |
土壌のpHを4.5に矯正するために必要な硫黄の量(kg/10a)
(玉田,1997「ブルーベリーをつくりこなす(江澤貞雄、農文協)p54 図3-1参照)
植え付け時に使用した硫黄粉が余っていたもので、ちょうどいい量でした。
なお、私が使用している硫黄粉の製品名は「土壌改革(細井化学工業)」です。
最初は日本ブルーベリー協会から買っていましたが、最近ヤフーショッピングの 「農援.com Yahoo!店」 の方がいいということに気が付きました。
まず価格が400円ほど安いです。
また、日本ブルーベリー協会経由だと近隣の西濃運輸の営業所まで取りに行かなくてはなりませんが、ヤフーショッピングは、一袋でも送料無料の上、自宅まで配送してくれます。
その上、ヤフーカードで決済すれば、TポイントやPayPayのキャッシュバックがあるので、さらにお得です。
取りにいかなくてもいい上に、キャッシュバックを含めれば、一袋あたり1000円ほどお得になりました。
数値だけではなく、生育状況や周辺の植生の変化などにも気を付けて観察していこうと思います。
まとめ
農地を借りる関係で植え付けの時期は決して適期ではなく、5月中旬から下旬の暑い時期でした。
硫黄粉の効果がでるには3カ月から1年くらいはかかるので、おそらく植え付け時の 土壌酸度は決して適した状態ではありませんでした。しかし、成長はそれほど悪くなく、元気に育ってくれました。
環境も整ってきて、今年はどれはど成長するのか楽しみです。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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