林業的に農業をみた場合~森林技術者から見た農業~ vol236

森林の写真 脱サラ・農起業
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脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。

農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。

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インスタグラムもやってます。

私は、ブルーベリー農園の傍ら、森林・林業関係の仕事をしています。

農業をはじめる以前から、10年以上、森林・林業関係の仕事ををしていたため、やや林業的な視点になることがあります。

過去記事にも書いたことがありますが、リライトし、「森林林技術者から見た農業」とうテーマで書いてみました。

林業と農業の植物を育てる目的

林業と農業は両方とも「植物を育てて有機物の資源を得る」仕事です。

植物が光合成をおこなって、作ってくれる資源を利用させてもらいます。

林業は、木質資源(木材やバイオマス燃料など)を得ることを目的としています。

(自然災害の防止や水源の涵養などの「生態系サービス」でもありますが、ここでは、資源の方で話をすすめます)

建築資材としての需要が高い時代の頃に発展した技術体系が色濃く継承されてきているため、基本的には良質な木材となる丸太を生産する技術が中心です。

ここでいう「良質」とは、節(枝が生えていた跡)が少なく、なるべく円柱状で太く長く、利用できる部分が多い丸太になる木を意味します。

一方、農業は、食材や家畜の飼料などを得ることを目的としています。

多くの場合、栄養価や食味、見た目などが優れる作物を多く収穫することを目標としています。

近年においては、食の安全性や健康の維持増進としての機能も重視されてきています。

林業の植え方、農業の植え方

植え方

林業では、苗畑で2~3年程度育ててから、山に植えます。

その時、「地拵え」(じごしらえ)という、植えるのに邪魔になる木や草を取り除いたり整地する作業が行われます。

基本的に肥料は用いず、多くの場合「裸苗」(はだかなえ)とよばれる、根がむき出しの状態の苗を植穴をほってそのまま植えます。

なお、私がとりくんでいるブルーベリー栽培、「ど根性栽培」は、極めて林業的な植え方をしています。

最近は林業でも。「コンテナ苗」と呼ばれる、特殊な容器でポット育苗した土付きの苗が出てきています。

一度自分でも植えたことがありますが、運ぶ時に重すぎて、本当に山の斜面で使うことを想定しているのか疑問でした。

林内に道が整備されていて車である程度運搬できないと、とても重労働です。

農業の場合、農法や作物などによりますが、肥料や堆肥を入れて耕運するなどの植え付け前の準備をした後にあらかじめ、育てた苗を植えたり、直接種をまきます。

肥料の考え方

林業の場合は基本的に肥料は施しません。

山林の場合、落葉などの有機物が永年にわたり堆積し、微生物の分解等の循環により、植物に必要な栄養が賄われているためです。

先人たちも、自然をよく観察し、経験的にも不要なことがわかっていたのでしょう。

一方、慣行農法とよばれている農業では、収穫等により、栄養分が畑から持ち出されるため、その分を補うという前提で、肥料などが投入されてきている場合が多いようです。

しかし、肥料の多投入などによる病害虫害や土壌汚染などの問題が発生しており、自然のサイクルに近い環境を再現することで、肥料を必要としないあるいは最小源とする方法が注目されています。

自然農法や無肥料栽培などは、この点で林業と農業の接点がでてきているように思えます。

適地適作は共通の重要事項

林業の場合は、同じ山の中でも、スギは谷筋、カラマツやアカマツは尾根に近いところ、ヒノキはその中間など、地形や地質・土質などに応じて適した樹種を見極めるのがとても大切です。

同じく、農業でも作物にあった畑・土で栽培することが、とても大切です。

ブルーベリー栽培では水はけがもっとも大切なので、私は水はけの良い火山灰質の黒ボク土が分布している地域を選びました。

この点は、植物を育てる上では最も大切であり、林業も農業も共通する部分だと思います。

林業と農業の栽培管理

(↑間伐したヒノキ林)

(1)「下刈」と「除草」

林業の場合、植えてから5~7年程度、苗木の生育を妨害する草や木を除去する「下刈り」(したがり)と呼ばれる、作業を行います。

農業の場合、苗などの生育が阻害される雑草を「除草」する場合が多いです。

農業の場合、「雑草は敵」と考えている場合も多く、特に野菜の栽培では土がむき出しの状態が「きれいな畑」とされることが多いと感じます。

一方、山地で草が生えていない場所は、岩石地か崩壊地、沢沿いといった、自然災害などのかく乱が継続されている場所くらいしかありません。地面むきだしの裸地は自然状態ではかなり不自然なものだと言えます。

(↑崩壊地。植物が徐々に斜面を安定させてくれる)

林業の場合、植えた木がほかの雑木や草などに生育を阻害されない程度まで成長した後は、雑木や草は、土壌の浸食防止などの役割があるため、作業に支障がない限り、雑木や草などは基本的に残します。

下刈は7月~8月の夏の暑い時期の重労働であるため、そんなに長期間やってられないという労働の事情もあるかもしれませんが、急斜面などがある山地で周辺環境を保全しながら収穫物を守っていくという、自然のしくみを観察した先人たちの知恵なのかもしれません。

また、下刈りは、以前は、全てのかん木などを刈り取る「全刈(ぜんがり)」が主流でしたが、現在では、かん木類などを残す手法も注目されています。

冬場のシカなどによる幼木の食害を防ぐため、列状に刈り取る「筋刈(すじがり)」や苗木の周辺だけを刈り取る「坪刈(つぼがり)」などと呼ばれています。

かん木などを周辺に残すことで、植林した木がシカなどにより集中的に食害を受けるのを防止する効果があると言われています。

農業でも、雑草の生える空間を残し、集中的に作物が食害を受けるのを防止する場合があります。

そして、雑草があることで害虫の天敵の住処になる。微生物が豊かになる。排水機能が向上する。

光合成により栄養分が蓄積されるといったメリットにも焦点があたってきており、農業においても雑草をできるだけ残したり利用することも見直されてきています。

しかし、生態系の恩恵を維持しながら、効率性などの落としどころをどこにおくのかは、双方に課題だと思います。

私はブルーベリー栽培では、木材チップを株元に厚くしくことで、保湿のほか、初期の雑草との競合をさける方法をとっていますが、それ以外の草は乗用草刈り機などを利用して省力的な方法で、最小限に刈っています。

天敵の住み家、排水性、や夏の暑さや冬の寒さかブルーベリーを守ってくれるなどの、効能を活かしたいためです。

(↑下草や刈草が夏の暑さからブルーベリーを守ってくれる)

(2)「間伐」と「間引き」

林業の場合植えてから20年程度たつと、「間伐(かんばつ)」とよばれる、間引きのための伐採を行います。

間伐をしないと、相互に光を奪い合い競争して、ひょろ長い木ばかりになってしまうため、太い根のはったがっしりとした木に育てるために行う作業です。

木の葉っぱがある部分を樹冠(じゅかん)といいます。

樹冠を上からみたときの面積を、木が生えている面積で割った数値を樹冠疎密度(じゅかんそみつど)といいます。

間伐はだいたい樹冠疎密度が0.8、すなわち木が生えている面積の80%に達したことが目安に行われます。

これは、だいた隣の木と枝と枝が触れたときに相当しますので、

隣と枝がぶつかりそうだな・・・という時期に間伐をします。

農業の場合も、種をまく場合は、数粒撒いて、徐々に「間引き」ながら、本数を減らしていきます。

間引きの時期も、基本的には、葉が触れ合う程度になったら間引くため、林業と同じような考え方をしています。

相互の競争により、ひょろ長い不健康な作物とならないように、適切な時期に行います。

最終本数より多く植える目的として

枯死(発芽不良)などのリスクが分散できる。

成長初期に本数が多いことで、成長がそろったり、風害などの外部ストレスに耐えやすくなる 

といったことが共通しています。

林業の場合は、それ以外にも、

一定の密度を保ちながら、育てることで、太さがそろった丸太が収穫しやすくなる、といったことや早めに樹が地表を覆うことで、下草の成長を抑え、前述の下刈り作業を行わなくてもよい状態にする、といったことも目的としています。

間伐も間引きも適切な時期に行わないと、後々まで、影響がでてしまい、なかなかとりもどせないことが多いです。

とくに、樹冠(葉っぱの生えている部分)が樹高の20%程度の森林は、間伐しても効果がなく、劇的に改善することはありません。

間伐手遅れの森林を間伐することは結構ですが、本当に手遅れの場合は、全て伐採して更新した方が健全な森林になります。

以前、野菜苗を育てていた際に、間引くのが遅くなってしまい、ひょろ長い苗ができてしまいました。

間引いても、節間(枝と枝の間の距離)が間のびしたような苗になってしまい、成長しても、しばらくはその影響をうけてひょろ長い形状になり、長らく健康状態が悪くなりました。

「自然の力で淘汰されるのでは?」

といった疑問を持たれた方もいるかもしれません。

正解でもあり間違いでもあります。

自然の状態であれば、バランスよく淘汰されますが、

人工林の環境も畑の環境も、自然状態ではなく人工的に作られた環境です。

林業であれば、例えば10,000m2に3,000本程度の苗を植えて、徐々に本数を減らしながら、植えた木を維持管理していきます。

自然状態の広葉樹林では10,000m2に10,000本程度の実生が生えてくると言われていますが、成長段階で、激しく淘汰されていき、ある程度成長した大きさで、同じ年齢の木が高密度で生えていることは、おそらくありません。

すでに人工的な環境下において、不自然な状態をつくりだしていることから、手を加えないと、それぞれの成長を阻害し、栽培している目的が達成できないことになります。

この点は、林業も農業も非常によく似ていると思います。

政策等の歴史

農業も林業も時代の変遷など様々な要因でビジネスとして成り立たない場合でも、延命措置のような形で多額の国補助金が投入されてきた歴史が見受けられます (すべてがそうな訳ではありません。) 。

林業も農業も昨今の厳しい情勢などを考えると、産業を守るべき補助金が長期的には産業の弱体化を助長する場合があるように思えます。

行政の補助金などは長期的なビジョンに基づく効果的な使い方をすれば、産業を支えることができるものです。

しかし、一方で、政治家や官僚の権威性としての使われ方に陥る危険性あることは、産業全般に言えるかもしれません。

 まとめ

林業も農業も、自然のしくみを利用しながら、収穫物という目的を達成するために努力が続けられてきています。

しかし、収穫物という特定の目的のみを最適化しようとした結果、自然環境との不調和が発生する場合があります。

林業も農業も有機物の資源を得るという目的と同時に、自然や生活環境への貢献も含まれる生態系サービスでもあるといえます。

産業の構造的な問題も含め、双方とも、抱えている課題だと思います。

今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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