硫黄粉という資材の特徴~土壌酸性にするだけではない?~vol768

ブルーベリー
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脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。

農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。

有機JAS認証を取得した「オーガニックブルーベリー」を栽培しています。

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ブルーベリーの森あづみのでは、千葉県木更津市の江澤貞雄さんという方が提唱している「ど根性栽培」という栽培方法にとりくんでいます。

使用している資材は、「菜種油かす」「硫黄粉」「木材チップ」です。

これらの資材は、ど根性栽培特有というわけではありませんが、ブルーベリー栽培で使われることが比較的多い資材ではないかと思います。

(ど根性栽培については以下などををご覧ください↓)

今回は、ブルーベリー栽培以外では、あまり用いられない「硫黄粉」について、使ってみて感じたことなどを書いてみました。

なお、この記事では、ラビットアイ系品種のブルーベリーをど根性栽培で育てているという前提で、書かせていただいております。

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硫黄粉とは?

硫黄粉とは、硫黄を粉砕して粉状にした製品です。

硫黄は、「多量要素」と呼ばれ、植物の生育に欠かせない栄養素ですが、日本は火山が多いため、その噴出物に豊富に硫黄が含まれ、通常は土壌にも必要な量は含まれています。

そのため、農業的には栄養素として投入するケースはなく、土壌を酸性にしたいときに用いられます。

最も、日本で栽培されている多くの作物はpH6.0~6.5くらいの弱酸性~中性付近を好む植物が多いようです。

酸性を好む作物は、ブルーベリーや、クリ、茶など比較的少数派なので、どちらかというとマイナーな資材だと思います。

ホームセンターでも、みかけないか、あっても小ロットの袋しか見たことがありません。

なお、硫黄は天然の鉱物を破砕しただけで、特に化学的な処理はされていないものなので、証明書類を添えて、有機JASの認証でも使用することが可能です。

土壌にもよりますが、だいたいpHを1下げるのに、10aあたり、100kg(1m2あたり100g≒お椀半分くらい)が目安となります。

ブルーベリーが酸性を好む理由

ブルーベリーが酸性を好む理由として、本などには下記のとおりと言われています。

①酸性土壌で高濃度にあるアルミニウム、鉄、マンガンへの耐性が強い。

②酸性土壌で不足するカルシウム、マグネシウムの要求量が少ない

③酸性土壌で安定しているアンモニア態窒素を好む

しかし、

①と②は、酸性土壌でも「生存できる」理由であり、酸性土壌意外でも適応できるとも言えるため、あえて栽培の過程で酸性にする理由はないものと考えられます。

③については、養液栽培による実験結果があり、アンモニア態窒素で栽培した方が成長量が大きい結果となっています。

窒素を含む化合物は、無機物質でも、有機物でも、分解されると一旦アンモニア態の窒素(NH4+)になります。

ブルーベリー農園の写真

土壌が弱酸性~中性付近(だいたいpH6.0~6.5付近)であると、硝化菌がンモニア態の窒素を硝酸隊窒素(NO3-)に変えてしまいます。

通常、硝酸態の状態で吸収できる作物が多いですが、ブルーベリーはアンモニア態の窒素(NH4+)の方が吸収しやすいようです。

そのため、前述の説明だと酸性土壌が適するという理屈のようです。

私は、それ意外にも、エリコイドなどの共生菌が、pHが酸性付近で働きやすいのではないかと考えていますが、今のところ特にエビデンスは持ち合わせていません。

なお、化学肥料などで、硝酸態窒素系のもアンモニア態窒素系のものがあるのは、窒素と化合している窒素以外の物質が、分解される過程で土壌に与える影響の違いです。

例えば、硫安(硫化アンモニウム((NH4)2SO4)からは硫酸根SO3が放出されるので、酸性に傾きやすくなり「結果として」アンモニア態窒素として吸収されやすくなります。

(菜種油かす)

有機肥料やその他の有機物の場合は、一旦アンモニア態に分解され、その後、主に硝酸態になるかは、土壌pH(と硝酸菌)によって左右されることとになります。

(ブドウの剪定枝。基本的に有機物が無機化されると土壌中では、一旦アンモニア態窒素になる)

硫黄粉の効果

植えつけ時に、株周り約1m2に、お椀半分~1杯(100g~200g)ほど散布しました。

もともとの土壌pHは6.5程だったため、pH4.5~5.5を目標としたためです。

1年程経過した後は、pH4.5~5.0くらいになっていました。

効果が出るまで、半年から1年程の期間はかかるものの、概ね理論値通りになるようです。

また、ブルーベリー園内には、モグラが見られることもあります。

木材チップの下は一時的にミミズやコガネムシの幼虫などが増えることがあるため、それらを求めてモグラが掘り起こす場合があります。

しかし、木材チップにもぐりこんでいこうとした形跡はあるものの、途中で引き返したような穴をみかけました。

私の師匠の江澤貞雄さんは、山林を切り開いてブルーベリー栽培を始めたため、イノシシの掘り起こしの被害がある場合があるそうです。

硫黄粉はイノシシ除けを兼ねているとのことでしたが、モグラにも効果があるようです。

最近の長野県の林業総合センターの発表資料などをみると、シカやクマなどにも硫黄由来の忌避剤は効果があるようです。

水源にあたる森林では、なるべく天然由来の忌避剤を模索しているようでした。

硫黄粉を散布するときの注意点

硫黄粉は、水にとけると硫酸になるため、眼に入ったりしないように、風の向きなどに注意しましょう。

汗をかいた皮膚などにつくと、かぶれるので、直接はさらわずに、必ずゴム手袋などを使用しましょう。

以前、植樹体験をやったときは、念のため、硫黄粉は、当日は使用せずに、後日、私がまきました。

硫黄粉は、丁寧に扱えば、危険な物質というわけではありませんが、念のため注意は必要です。

硫黄粉の入手先と費用

硫黄粉は、ホームセンターなどには売っていないため、たくさん使いたい場合は通販などで購入した方がいいと思います。

私は、「土壌改革(細井価格工業株)」という製品を使っています。

今のところ、特に、Softbankやワイモバイルの携帯を使っている人は、

ヤフーショッピングで買うのが一番安くて、送付条件もいいように思います。

当時は価格が20kgあたり、6,000円ちょっとでしたが、今はもっと値上がりしているようです。

これまで、約600本で大体6袋使っていますので、約36,000円くらいでした。

特に追加はしていないので、一応、硫黄粉の費用的にはこれで全部です。

私が硫黄粉を使用するとき

私の場合は、硫黄粉は、植え付け時のみ使用し、その後は施していません。

5年前に植えた株元を測ってみると、現在でもpH4.5~5.5くらいになっているため、表面散布のみでもわりと長く効いているようです。

もっとも、根の広がる範囲は生長著しく、当然ながら散布範囲より広くなっており、通路の真ん中まで達しているものもあります。

本来なら、根域の範囲に追加散布するのかもしれませんが、

ラビットアイ系ブルーベリーの成長は著しく、特に必要性を感じないため、追加していません。

もっとも、土壌の適応範囲の広いラビットアイ系品種をメインに栽培しているためかもしれません。

まとめ

私の師匠である江澤貞雄さんも、著書の中で、ラビットアイ系であれば、pH5.5くらいまでは問題ないといったことを述べており、数年前に相談した際も、ラビットアイ系は、pHをそれほど重要視していなかった印象でした。

また、以前、挿し木と接木の講習会などでお世話になった、山梨県北杜市のO・B・Iベリーの小尾能敏さんも、著書の中で。ラビットアイはpH4.5~6.0でよく育ち、pH6.2~6.5程度ならラビットアイは問題ないという主旨のことを述べていました。

前述のアンモニア態窒素云々の説明には、少しずれが出てしまいますが、うちの圃場でも実際問題ない感じです。

ラビットアイ系であれば、最初から硫黄粉も不要なケースがあるかもしれません。

また、新たに植栽するときがあるかわかりませんが、硫黄粉無しも、比較してみようかと思いました。

今のところは、

  • 初期成長の補助
  • 獣除け

を目的として、どちらかと言えば「念のため」という位置づけになってきています。

栽培については様々な考え方がありますし、資材もいろいろあると思います。

また、当然ながら、同じ栽培方法でも、資材の要否や量などは圃場にあわせてカスタマイズしていく必要があります。

今回は、硫黄粉という資材を、使って5年ほどたった、うちの農園での一例を紹介させていただきました。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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