脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
ブルーベリーの森あづみののブルーベリーの95%は「ラビットアイ系」といって、一般的に関東以西の暖地で栽培されることの多い品種です。
寒冷地では、「ハイブッシュ系(特にノーザンハイブッシュ系)」と呼ばれる系統の品種が選択されることが一般的です。
しかし、私は、強い生命力を持ち、完熟すると糖度の高い実をたくさんつけるラビットアイ系品種の魅力に魅かれ、冬は寒い場所でラビットアイ系中心に栽培しています。
長野県安曇野市穂高地区、標高約620mという立地もあり、最初は寒さが心配でしたが、これまで無事に育っています。
栽培、4年目、冬は3シーズン目に入り、観察の経過などについて書いてみました。
魅力がたくさんラビットアイ系ブルーベリー
日本で栽培されているブルーベリーの栽培品種には主に、「ハイブッシュ系(北部、南部)」と「ラビットアイ系」があります。
ハイブッシュ | ラビットアイ | 備考 | |
樹の大きさ | 1~2m | 2m以上 | |
樹勢 | 中 | 強い | |
果実の大きさ | 中~大 | 小~中 | |
果実の収量 | 少 | 多 | |
果実の糖度 | 中 | 高 | |
成熟時期 | 6月下旬から | 7月下旬から | 長野県安曇野市 |
耐寒性 | 優れる | 劣る | |
耐暑性 | 劣る | 優れる |
(出典:ブルーベリーをつくりこなす(江澤貞雄著、農文協)図4-4より 一部加筆)
これまで、ラビットアイ系ブルーベリーはどちらかと言えば、ノーザンハイブッシュより品質が劣ると言われてきました。
しかし、私はラビットアイ系推しです☆
ノーザンハイブッシュ系は初夏の爽やかな酸味と甘みとの絶妙のバランスを楽しんだり、大粒を楽しんだりと、パンっと張ったような食感なども素晴らしいです。
しかし、ラビットアイ系もひけをとらない魅力があります。
ノーザンハイブッシュ系と比較すると、若干、皮や種の食感が残る場合もありますが、完熟した時の糖度はノーザンハイブッシュより高く、完熟すると深いうま味があり、濃くて美味しいです。
収量もノーザンハイブッシュの2~3倍程度収穫できますので、摘み取り園にも向いています。
ラビットアイ系をメイン選んだのは、栽培方法による理由のほか、そもそも自分がラビットアイ系のブルーベリーの味も大好きだったからです。
さらに2021年に摘み取り園をオープンして、わかったことですが、
ラビットアイ系は「お子さんに好まれる味」だということでした。
寒冷地のラビットアイ系栽培はあまり関心をもたれていない?
栽培をはじめる前に、既存の研究結果などもできる範囲で調べましたが、ほとんど見つけることができませんでした。
それらも剪定や花芽調整などの栽培条件が詳細に書かれていなかったため、あまり納得のいく内容ではありませんでした。
そもそも、日本ではノーザンハイハイブッシュ系を中心に栽培や研究がされてきた歴史があるため、わざわざ、ノーザンハイブッシュが育つ場所でラビットアイ系を栽培することに関心がもたれてこなかったのかもしれません。
しかし、温暖化で寒冷地と呼ばれているところでも、夏の猛暑などは栽培にとって無視できないレベルになってきており、
暑さに強いラビットアイ系は将来的に主力品種になるのではないかと考えています。
観光農園の場合は、夏休み期間などに収穫できるのも強みだと思います。
ラビットアイ系は通説ほど寒さに弱くない
リンゴと温州ミカンの例えは言い過ぎ?
書籍などで記載されている栽培適地の例えとして、ノーザンハイブッシュ系はリンゴの栽培適地、ラビットアイ系は温州ミカンの適地と重ねられることがあります。
しかし、実際に観察する限り、ラビットアイ系の耐寒性はそこまで弱いわけではないように思います。
あくまでノーザンハイブッシュ系と比較しての話だと思います。
ラビットアイ系ブルーベリーは冬に枯れるか?
(↑冬の寒さにも耐えてくれています)
ブルーベリーの森あづみのでは、植えつけてから、冬は3回目ですが、これまで、ラビットアイ系ブルーベリーは、冬に枯れたことはありません。
マイナス2桁になることもありますが、枯れたことはありません。
なお、雪囲いなどは全くしていません。
雪囲いは基本的には積雪の枝折の対策なので、どちらかといえば太平洋側の気候で、冬は雪の少ない長野県安曇野市では必要ないと考えています。
ラビットアイ系ブルーベリーは冬に枝枯れが発生するか?
結論から言えば、長野県安曇野市の「ブルーベリーの森あづみの」ではラビットアイ系ブルーベリーにこれまでは、枝枯れはほとんど発生していません。
栽培当初、最も懸念していたのが、枝枯れによる収量の減少です。
ブルーベリーは前の年に伸びた新しい枝の先に花芽が作られるので、冬に枝先が枯れ込んでしまうと、花が咲かず、実が収穫できず、結果的に収量が減ってしまいます。
これまで見てきたかぎり、枝枯れが発生するのは
「細く短い弱い枝」か「徒長気味で花芽が形成されていない枝」でした。
「細くて短い枝」はもともと剪定で間引いてしまう対象なので、収量には影響がでません。
「徒長気味で花芽が形成されていない枝」は、おそらく、晩秋、最後までひたすら伸び続けていた枝ではないかと思います。
枝などの伸長には「ジベレリン」という植物ホルモンが関係しており、樹高を伸ばすため、もっとも頂部にある成長点に集中しやすくなります。
一般に花芽が形成されるには、以下の条件が必要となります。
- 枝の伸びが秋までにある程度の範囲で止まり、冬までに花芽が作られるための期間がある。
- 根から分泌される「サイトカイニン」という植物ホルモンが活性化すること
晩秋まで伸び続け、植物ホルモンの「ジベレリン」が活性化が続いてしまったた枝は、花芽をつくる期間がなく、ジベレリンがサイトカイニンを抑えるため、花芽はつくられずに葉芽(葉をだすための芽)になります。
つまり、徒長気味に伸び続けた枝には花芽が無い場合が多いので、枝の先が枯れても、収量には影響しません。
(↑徒長気味に伸びた枝の先端部3~5cmくらいは枯れやすい)
(↑細い弱い枝もやや枯れやすい)
さらに、徒長した枝が枯れるのは、本当に先の細い部分だけでした。
樹形のバランス的には、摘心のような形になるので、むしろいいのかもしれません。
ツル性以外の落葉広葉樹は、冬の間に春先の栄養分は枝に蓄えられます。
栽培方法、環境などにより、枝が健康に育つことができたか、栄養分を枝に十分蓄えることができたかどうかにも、枝の耐寒性は大きく左右されると思われます。
今年は去年より、徒長気味で葉芽ばかりの枝そのものが減っており、徒長気味に見えてもバランスよく花芽をつけているものの割合が増えてきています。
まとめ
地球温暖化の影響なのか、「ブルーベリーの森あづみの」のある長野県安曇野市穂高の気温も、30~40年前の10年間と、ここ10年を比較すると、年平均気温で約0.5度上昇しています。
寒冷地(平均気温12°以上)と呼ぶにはぎりぎりのところになってきており、ここ3年くらいは平均気温12°を超えてしまっています。
夏の最高気温も33度程度だったのが、ここ数年では37度になることもめずらしくなくなってきました。
このまま温暖化が進むと、夏場に強いラビットアイ系ブルーベリーは頼りになる存在ではないかと思います。
今一番寒い時期で、まだ寒い時期が続くので油断はできませんが、ともあれ、寒さに耐えてくれているブルーベリーさんたちには、本当に感謝で一杯です。
これからも寒冷地でのラビットアイ系品種のブルーベリー栽培の可能性をもっともっと探っていきたいと考えています。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
参考文献
- ブルーベリーをつくりこなす(江澤貞雄、農文協)
- 剪定を科学する( 菊池卓郎/塩崎雄之輔 、農文協)
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