新規就農で最初に考えるべき価格設定~農業経営は値決めで決まる~

新規就農を考える方から、よく相談を受ける内容のひとつが、

「ブルーベリーって、いくらで売ればいいですか?」
「観光農園の料金って、相場はいくらですか?」

という“価格設定”についてです。

苗木の選定、栽培方法、補助金、販路づくり…。
新規就農では考えることが山ほどありますが、実はそれら以上に重要なのが、価格設定(値決め) かもしれません。

京セラ創業者・稲盛和夫氏の有名な言葉に、こうあります。

「値決めは経営」

まさにその通りで、価格は単なる数字ではなく、経営そのものに直結します。

今回は、これからブルーベリーなどで新規就農を目指す方へ向けて、価格設定の考え方をお伝えします。


目次

なぜ価格設定がそんなに重要なのか?

価格は、売上だけでなく、次のような経営全体に影響します。

  • 必要な生産量
  • 必要な面積・設備投資
  • 必要な人手
  • ターゲット顧客層
  • ブランドイメージ
  • 利益率
  • 働き方・生活水準

たとえば、価格が2倍なら、同じ売上を作るのに販売量は半分で済みます。

つまり、価格次第で必要な規模も労力も大きく変わる のです。

それなのに、価格だけ「なんとなく相場で決める」のは危険です。


新規就農で価格設定に“正解”はない

ここで大事なのは、価格設定に唯一の正解はない ということです。

なぜなら、事業ごとに違うからです。

同じブルーベリー農園でも、

  • 高品質ギフト販売型
  • 直売所メイン型
  • 観光農園型
  • 加工品ブランド型
  • 地域密着型
  • 高単価少量生産型

…などなど、そのビジネスモデルが違えば価格も変わります。

だからこそ、他人の価格をそのまま真似しても意味がありません。


価格設定でやってはいけないこと3選

① 周囲の価格を気にしすぎる

「この地域ではこのくらい」
「他の農園が1,500円だからうちも」

こうした決め方はおすすめしません。

なぜなら、他社とあなたでは、

  • 強み
  • 客層
  • 立地
  • 接客
  • ブランド力
  • 世界観

が違うからです。

価格が違うということは、そもそも対象とするお客様も違う場合が多いです。


② 原価の積み上げだけで決める

材料費、人件費、経費を積み上げて、利益を乗せる。
これは一見正しそうですが、それだけでは不十分です。

なぜなら、お客様は原価ではなく、自身にとっての価値 にお金を払うからです。

たとえば観光農園なら、

  • 楽しい思い出
  • 家族時間
  • 非日常体験
  • 子どもの学び
  • 写真映え
  • 安心安全

こうした価値が価格の本体です。


③ 安売りから入る

新規就農でありがちなのが、

「最初だから安くしよう」
「知名度がないから安くしよう」

という考えです。

しかし安売りは、

  • 利益が出にくい
  • 量を売らなければならない
  • 疲弊しやすい
  • 値上げしにくい
  • 安さ目的のお客様が集まりやすい

というリスクがあります。

特に個人規模の農業では、薄利多売はかなり難易度が高い戦略 です。

大きな資本や生産量、豊富な流通網・販売経路をもっている、大企業などが得意とする分野で、それらを駆使して、差別化をはかっています。

ここに参入するのは、小規模事業者では、とても太刀打ちできません。


私が実際にやっている価格設定の考え方

私自身は、まず最初に、

「自分に必要な売上・利益」

を決めます。

たとえば、

  • 家族の生活費
  • 事業継続費
  • 将来投資費
  • 心理的余裕資金

などです。

そこから逆算して、

  • 必要販売量
  • 面積
  • 商品単価
  • 集客人数

を考えていきます。

つまり、

価格 → 規模 →戦略

の順番です。

多くの人は逆に、

規模を広げる → 売れそうな価格にする

と考えがちですが、これはかなり危険です。


少し高いくらいが、ちょうどいいこともある

新規就農者の多くは、自分の価値を低く見積もりがちです。

  • まだ初心者だから…
  • 地方だから…
  • 小規模だから…

しかし実際には、

  • 誠実さ
  • 人柄
  • ストーリー
  • 手間ひま
  • 地域性
  • 体験価値

に価値を感じるお客様は多くいます。

だからこそ、少しドキドキするくらいの価格設定が、意外と適正だったりします。


価格設定は一度決めて終わりではない

実際には、やってみないと分からないことも多いです。

だから私は、

  • 売れ行き
  • 客層
  • リピート率
  • 利益率
  • 作業負荷
  • 満足度

を見ながら、常にモニタリングし調整しています。

価格設定は固定ではなく、改善し続けるもの です。


まとめ~新規就農ほど価格設定を軽く見ない~

新規就農では、

  • 栽培技術
  • 面積
  • 補助金
  • 設備投資

に意識が向きやすいですが、実はその前に、

「いくらで売るか」

を真剣に考えるべきです。

価格次第で、必要な規模も働き方も人生も変わるのは間違いありません。

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この記事を書いた人

脱サラ元公務員。
13年働いた県庁を辞めて、農業法人を経て独立。
ブルーベリー農園を経営しています。

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