「直売所は安くしないと売れない」
そんなイメージを持っている方は多いかもしれません。
確かに、直売所では価格競争が起こりやすく、「少しでも安く」が重視される場面もあります。
しかし、小規模の生産者でも、考え方を少し変えるだけで、直売所で安定した売上をつくることは十分可能です。
私自身、経営の中心はECサイトや観光農園ですが、一部の商品は直売所でも販売しています。
直売所では、情報を伝える手段が限られています。そのため、普段私が大切にしている「伝えるマーケティング」とは相性が良いとは言えません。
それでも、これまで売れ残ることはほとんどなく、少なくとも月10万円以上の売上にはなっています。
今回は、私が直売所で意識している「ほんの少しのコツ」をお伝えします。
まずは、直売所に来るお客さんの目的を考える

どんな場所でも、マーケティングの基本は「誰に何を売るのか」です。
直売所のお客さんを大まかに分けると、次の3つに分類できます。
- 規格外品を含め、よりお得な食材を探している人
- 新鮮さなど、直売所ならではの品質の良いものを探している人
- お土産を探している人
もちろん、観光地なのか、生活圏の直売所なのかによって割合は変わります。
しかし、「どんなお客さんが、どんな目的で来ているのか」を考えることは、どの販路でも変わらない基本です。
作物を「消費」と「嗜好」で分けて考える

作物の用途は、大きく次の2つに分けられます。
①消費的(日常的)な用途
普段の食卓で使われる野菜や穀類など、「食事に必要で、お腹を満たすもの」です。
②嗜好的な用途
果物やエダマメ、サツマイモなど、「あってもなくても良いけれど、心を満たしてくれるもの」です。
言い換えれば、
- 消費的な用途=生活必需品
- 嗜好的な用途=ちょっとした楽しみ
という違いがあります。
小規模経営者は「品質×嗜好品」を狙う

小規模の生産者におすすめなのは、「新鮮さや品質を求めるお客さん」に対して、「嗜好的な用途の作物」を販売することです。
理由はシンプルです。
- 少量でも利益を確保しやすい
- 価格競争になりにくい
- 差別化しやすい
- 売れ残りのリスクを抑えやすい
私の場合、直売所では次のような商品を販売しています。
- ブルーベリー
- ミニトマト
- サツマイモ
- エダマメ
- はちみつ
- ハーブティー
どれも「お腹を満たす」というより、「食べる楽しさ」や「ちょっとした贅沢」を提供する商品です。
小規模経営では、大量生産や価格勝負で勝つのは難しいからこそ、「心を満たす価値」を届けることが重要だと感じています。
パッケージは、商品の一部

直売所では、商品の説明をするスタッフが常にいるわけではありません。
だからこそ、パッケージそのものが「無言の営業マン」になります。
丁寧なパッケージは、品質の良さや作業の丁寧さを想起させます。
実際にお客さんを観察していると、品質にこだわる方ほど、細部までよく見ています。
袋の選び方、ラベルのデザイン、シールの貼り方。
小さな違いが、購入の決め手になることも少なくありません。
説明は、できる限り添える

直売所では、商品の説明スペースが限られています。
それでも、特に珍しい品種や初めて見る作物は、できる限り説明を添えることをおすすめします。
- どんな味なのか
- おすすめの食べ方
- 保存方法
- どんな特徴があるのか
こうした情報があるだけで、お客さんの不安は減り、購入率は大きく変わります。
有機JASマークのような認証制度も、それ自体が品質を伝える「説明」の一つです。
日頃の発信が、売り場で効いてくる

「直売所で見かけて買った」のではなく、「Instagramで見たから買いに来た」という方も少なくありません。
普段の栽培の様子や収穫風景、作り手の想いを発信しておくことで、限られた売り場の情報量を補うことができます。
直売所に並んでいる商品は同じでも、作り手の顔が見えるだけで、選ばれる理由になります。
日常の発信は、すぐに結果が出るものではありません。
しかし、コツコツ積み重ねた情報発信は、確実に売上につながっていきます。
直売所だけでは限界もある

もちろん、直売所だけで大きな利益を上げるには限界があります。
なぜなら、売り場面積が限られているからです。
施設の規模や立地によって来店客数もある程度決まっているため、どれだけ人気商品でも、無限に売れることはありません。
売上をさらに伸ばしたい場合は、複数の直売所を活用する方法もあります。
私の場合は、観光農園やECサイトが経営の中心であるため、複数の直売所への出荷は難しい状況です。
一方で、直売所を主力販路とする場合は、出荷先を増やすことで売上を伸ばせる可能性があります。
まとめ:「誰に何を売るか」を決めるだけで、結果は変わる

直売所で売上を伸ばすために、特別なテクニックは必要ありません。
大切なのは、次の3つです。
- 誰が買うのかを考える
- 何を売るのかを決める
- どう伝えるのかを工夫する
小規模経営だからこそ、大規模生産者と同じ土俵で戦う必要はありません。
「品質を求める人」に、「心を満たす商品」を届ける。
その視点を持つだけで、直売所は価格競争の場から、自分らしい価値を届ける場所へと変わります。
もし、「自分の農園では何を売るべきか」「どの販路を選ぶべきか」と悩んでいる方は、一度立ち止まって、自分の商品とお客さんを見つめ直してみてください。
販路選びや商品設計、情報発信の考え方によって、同じ作物でも収益性は大きく変わります。
私自身も、新規就農や小規模農業の経営相談、販路設計のサポートを行っています。
「自分の強みを活かした農業経営を考えたい」という方は、お気軽にご相談ください。
