新規就農を目指す方に向けた研修や支援制度は、全国各地で充実しています。
その多くが教えてくれるのは**「栽培技術」**です。
もちろん、これは欠かせません。
良い作物を育てられなければ、商品やサービスは成立しないからです。
しかし、新規就農を考える方と話していると、もう一つ非常に大切な学びが後回しになっていると感じることがあります。
それが**「経営」**です。
栽培技術と経営は、車でいう両輪のような関係です。
農業も、ビジネスである

農業は自然を相手にする仕事ですが、一方でビジネスでもあります。
ビジネスとは、
- 誰かの悩みや願いを解決する商品・サービスをつくる
- 必要としている人へ届ける
- 継続できる利益を生み出す
この仕組みを作ることです。
これは農業だけではありません。
どんな仕事でも同じ考え方で成り立っています。
ところが農業では、どうしても栽培技術に意識が向きやすい傾向があります。
なぜ栽培技術ばかりに目が向くのか

理由はいくつかあると思います。
一つは、長年JAなどへの出荷を前提とした仕組みが中心だったこと。
販売先がある程度決まっていれば、良いものを作ることが最優先になります。
また、新規就農を目指す人は、
「植物を育てることが好き」
「自然の中で働きたい」
という思いから農業を始める方も多く、栽培そのものへの興味が強いのも自然なことです。
しかし実際には、良い農作物ができても、それだけでは経営は成り立ちません。
「商品」を作るだけではなく、「届ける」ことまでが経営

例えば、
- 誰に販売するのか
- どのように届けるのか
- どのくらいの規模を目指すのか
- 設備投資はどこまで行うのか
- どんな働き方をしたいのか
こうした判断はすべて経営です。
栽培技術とは違う知識や考え方が必要になります。
だからこそ、
栽培技術を学ぶ先生とは別に、経営を学ぶ先生がいても良い
私はそう考えています。
経営は誰に教われば良いのか

私の考えは、とてもシンプルです。
自分が得たい成果を実際に出している人から学ぶこと。
これは栽培技術も同じです。
ブルーベリー栽培を学ぶなら、実際に高品質なブルーベリーを栽培している人から学ぶ方が早いでしょう。
経営も同じです。
ただし、自分が目指すものをすべて持っている人は、そう多くありません。
栽培はAさん。
販売はBさん。
経営の考え方はCさん。
そんなふうに複数の人から学んでもまったく問題ありません。
直接教わることが難しければ、
- 本
- セミナー
- YouTube
- ブログ
こうした媒体から学ぶことも十分価値があります。
売上だけではなく、「どんな人生を送りたいか」で考える

成果というと、
「年商○○万円」
「利益○○万円」
そんな数字ばかりを想像しがちです。
もちろん利益を出すことは事業を続けるための大前提です。
しかし、それ以上に考えたいのは、
「どんな暮らしがしたいのか」
ということです。
例えば、
- 家族との時間を大切にしたい
- 一人でも無理なく経営したい
- 少人数で高品質な農業を続けたい
- 大規模経営に挑戦したい
どれも正解です。
だからこそ、
「この人のような暮らし方がしたい」
と思える人を見つけることが、経営を学ぶ近道になるように感じています。
私が影響を受けた考え方

実は、私が経営を学んでいるメンターは、農業分野の方ではありません。
農業以外のビジネスから学ぶことも非常に多く、現在でもセミナーや書籍から継続して学んでいます。
一方、農業分野で最も影響を受けた一冊を挙げるなら、杉山経昌さんの**『農で起業する!』**です。
この本で紹介されているのは、
スモールビジネスで利益を最大化する考え方。
最初から大きな設備投資をせず、
高品質なものを追求しながら、
少しずつ規模を広げていく。
この考え方には、今でも大きな影響を受けています。
当時はブルーベリー栽培でも、大規模投資を前提としたモデルが注目されていました。
私はそれとは逆の道を選びました(笑)。

理由はシンプルです。
私自身が、
「無理なく、少しずつ成長していく暮らし」
を望んでいたからです。
経営に「再現性」はあるのか?

最近は、
「誰でも再現できる経営メソッド」
という言葉を見かけることがあります。
もちろん参考になる部分はあります。
しかし実際には、経営はそこまで単純ではありません。
立地も違えば、
資金も違い、
家族構成も違い、
価値観も違います。
だから、そのまま真似してもうまくいくとは限りません。
大切なのは、
「考え方」を学ぶこと。
そして、自分の状況に合わせて実践し、改善を繰り返していくことです。
そうして少しずつ、自分だけの経営スタイルが出来上がっていくのだと思います。
まとめ

新規就農では、栽培技術を学ぶ環境はたくさんあります。
しかし、農業を長く続けるためには、経営を学ぶことも同じくらい重要です。
そして経営を学ぶ相手は、必ずしも農業関係者である必要はありません。
「自分が目指したい働き方や暮らしを実現している人」
そんな人を見つけて学ぶことが、遠回りのようで実は一番の近道ではないでしょうか。
