「観光農園だから、お客様に収穫してもらえばいい」
観光農園を始めようと考えたとき、そんなふうに考える方もいるかもしれません。
もちろん、お客様自身に収穫してもらうことは、観光農園の大きな魅力です。
しかし、私は観光農園であっても、農園主自身が定期的に収穫することをおすすめしています。
今回は、その理由について、実際にブルーベリー農園を経営している立場からお話しします。
「収穫」は販売のためだけの作業ではない

「ブルーベリーの森あづみの」では、ブルーベリー狩りだけを行っているわけではありません。
通信販売による全国への発送、一部直売所での販売なども行っています。
そのため、シーズン中は定期的にブルーベリーを収穫しています。
これはもちろん、販売するためでもあります。
しかし、収穫を続けていると、それ以外にも大きなメリットがあります。
それは、
「今、農園の中がどうなっているのかが分かる」
ということです。
収穫をしていると、品種ごとの状態が分かる

ブルーベリーは、すべての品種が同じタイミングで熟すわけではありません。
品種によって熟す時期が違いますし、同じ品種でも木によって状態が違うことがあります。
さらに、その日の天候や気温によっても、実の熟し方は変わってきます。
定期的に収穫をしていると、
「この品種は今がちょうど食べごろ」
「こちらはもう少し待った方がいい」
「この木はよく熟している」
といったことが、だんだん頭に入ってきます。
これは、観光農園を運営するうえで非常に大きなメリットです。
お客様から、
「今、一番おすすめの品種はどれですか?」
「甘いブルーベリーはどれですか?」
と聞かれたときにも、実際の状態を見ながらご案内することができます。
「品種の知識」だけでは足りない
品種の特徴を覚えることも大切です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
実際の農園で、
「今日はこの品種がこんな状態になっている」
ということを日々見ているからこそ、お客様に具体的な説明ができます。
農園主自身が収穫することで、農園の状態をリアルタイムで把握できるのです。
収穫技術も、日々の積み重ねで上達する

もう一つのメリットが、収穫技術です。
ブルーベリーは、すべて同じように収穫すればよいわけではありません。
完熟した実を見極めるには、色だけではなく、実の状態や触ったときの感覚など、経験から身につく部分があります。
定期的に収穫をしていると、
「この実なら収穫して大丈夫」
「これはもう少し待とう」
という判断が、少しずつできるようになります。
そして、その経験はそのまま観光農園でのお客様への案内にも活かせます。
「完熟したブルーベリーは、こういうところを見てください」
「この実は、こうすると簡単に取れますよ」
といった、実践的なアドバイスができるようになります。
これは、単に品種名や栽培方法を説明するだけでは伝えにくい部分です。
自分自身が収穫をしているからこそ伝えられる情報があります。
収穫をすると、農園のメンテナンスにもなる

収穫のもう一つのメリットは、農園のメンテナンスです。
ブルーベリーを収穫していると、
・傷んだ実
・過熟してしまった実
・落ちそうになっている実
・クモの巣
など、普段は見落としてしまいそうなものにも気づきます。
見つけたものは、その場で取り除いたり、必要な対応をしたりします。
その結果、ブルーベリー狩りのお客様から、
「ブルーベリーがきれいですね」
「クモの巣が少なくていいですね」
と言っていただくことがあります。
もちろん、クモは害虫を食べてくれる存在なので、農園にとって悪いものではありません。
むしろ、農業という視点では大切な存在です。
ただ、観光農園としてお客様をお迎えするこの時期だけは、必要に応じて少し除去させてもらっています。

ここにも、農業としての考え方と、観光農園としての考え方の両方が必要だと感じています。
そもそも、お客様がすべての実を収穫してくれるわけではない

そして、観光農園だからこそ忘れてはいけないことがあります。
それは、
「お客様がすべての実を収穫してくれるわけではない」
ということです。
たくさんのお客様が来園してくれたとしても、木に残る実はあります。
熟しすぎてしまう実もあります。
傷んでしまう実もあります。
そうした実をそのままにしておくと、害虫や蜂などを呼び寄せる原因になることもあります。
そのため、観光農園でも、農園主やスタッフによる定期的な確認とメンテナンスが必要になります。
「お客様に収穫してもらうから、農園側は収穫しなくていい」
ということではありません。
観光農園の収穫は「農園を知る時間」

私は、観光農園における収穫を、
「販売のためだけの作業」ではなく、「農園を知るための時間」
として考えています。
収穫をすることで、
・どの品種が今どんな状態なのか
・どこに完熟した実が多いのか
・傷んだ実がないか
・害虫などの問題がないか
・木の状態に変化がないか
・お客様にどんな案内をすればよいか
こうしたことが見えてきます。
つまり、収穫そのものが**農園の状態を確認する「観察の時間」**にもなっているのです。
観光農園を始めるなら「お客様に任せる」と「自分で見る」の両方が大切

これから観光農園を始めようと考えている方には、ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。
それは、
「お客様に収穫してもらうこと」と「自分自身で農園を見ること」は別の仕事だということです。
お客様には、ブルーベリー狩りを楽しんでいただく。
そして農園側は、その裏側で農園の状態を確認し、必要な収穫やメンテナンスを行う。
この両方があって、安心して楽しんでもらえる観光農園になるのだと思います。
毎日すべてを収穫する必要はありません。
販売量や農園の規模にもよりますが、少しでも定期的に自分で収穫して、農園の状態を確認することをおすすめします。
その積み重ねが、品種を見る目を養い、収穫技術を高め、お客様への案内にもつながっていきます。
新規就農では「作業」ではなく「経営につながる意味」を考える

新規就農をすると、やることがたくさんあります。
栽培、草刈り、収穫、選別、発送、販売、接客、情報発信……。
そのため、「収穫は収穫」「接客は接客」と作業を分けて考えがちです。
しかし、実際には一つの作業が、別の仕事にもつながっています。
収穫をすることで農園の状態が分かる。
農園の状態が分かるから、お客様への説明ができる。
お客様への説明ができるから、満足度が上がる。
そして、農園の状態を把握しているからこそ、栽培上の問題にも早く気づくことができる。
こう考えると、収穫は単なる「実を取る作業」ではありません。
農園を経営するための情報を集める、大切な仕事の一つでもあります。
これから観光農園を始める方へ
観光農園を始めると、
「お客様にどう楽しんでもらうか」
ということを考えるのはもちろん大切です。
ただ、それと同時に、
「農園側は、どこまで農園を見ておく必要があるのか」
という視点も持っておくことをおすすめします。
観光農園は、お客様に見えている部分だけで成り立っているわけではありません。
その裏側にある日々の観察、収穫、メンテナンス、栽培管理の積み重ねが、最終的な「農園の価値」につながっていきます。
新規就農・農業起業は「始める前の設計」が大切です
私自身、2019年に新規就農してから、栽培だけではなく、販売、通信販売、直売、観光農園、情報発信など、さまざまなことに取り組んできました。
実際に農園を経営してみると、始める前には見えていなかったことがたくさんあります。
だからこそ、新規就農や農業起業を考えている方には、
「何を作るか」
だけではなく、
「誰に、どのように届けるのか」
「どんな販売方法を組み合わせるのか」
「自分の農園の強みをどう作っていくのか」
といった、経営全体を考えてから農業を始めることをおすすめしています。
私の農園経営の経験をもとに、新規就農や農業起業についてのご相談もお受けしています。
「これから農業を始めたいけれど、何から考えればいいのか分からない」
「観光農園をやってみたい」
「農産物の販売まで含めて、農業経営を考えたい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
農業を始めることがゴールではなく、始めた後に「続けられる農業経営」をつくること。
そのために、これまでの経験を少しでもお役立ていただければと思っています。