長野県安曇野市では、日に日に秋が深まってきました。
ブルーベリーの収穫シーズンが終わり、落葉が進んでいくと、少しずつ来年に向けた準備が始まります。
あと2カ月ほどすると、いよいよブルーベリーの剪定シーズンです。
ブルーベリーの剪定は、農作業の中では比較的「軽作業」に分類されると思います。
重いものを運ぶわけでもありませんし、大きな機械を使うわけでもありません。
ただし、ひとつ大きな特徴があります。
それは、とにかく時間がかかることです。
私の場合、剪定は一気に終わらせるのではなく、3カ月ほどかけてコツコツと進めています。
そして、このように時間のかかる作業だからこそ、剪定に使う「道具」が意外と重要になってきます。
ブルーベリーの剪定は「細かな枝をたくさん切る」

ブルーベリーの剪定が、他の果樹の剪定と少し違うところがあります。
それは、
細かな枝を多数切ること。
もちろん、ブルーベリーでも樹形を整え、主軸となる枝をつくっていくことは重要です。
しかし、それだけではありません。
不要な枝を整理しながら、古くなった枝を更新し、毎年新しい枝へと入れ替えていく。
そのため、剪定作業の中で「細かな枝を繰り返し切る」という作業のウエイトが大きくなります。
他の果樹では、樹形の骨格をつくることが特に重視され、細かな枝を残す場面もあります。
一方、ブルーベリーでは、細かな枝を一本一本確認しながら整理していくことが多い。
つまり、剪定バサミを開いて、枝を切って、また開いて、次の枝を切る。
これを、とにかく繰り返します。
ここに、道具選びの重要性があります。
ブルーベリーの剪定バサミは「軽さ・小回り・切れ味」

私自身の経験からすると、ブルーベリーの剪定に適しているのは、
- 軽い
- 小回りがきく
- 切れ味が良い
このような剪定バサミです。
ブルーベリーの剪定では、太い枝を一度切ることよりも、細かな枝を何本も何本も切っていく場面のほうが多くなります。
そのため、一本を切るために大きな力が必要なハサミよりも、軽く、手の中で扱いやすく、スッと切れるハサミのほうが使いやすい。
特に長時間の作業になると、この違いが積み重なってきます。
もちろん、主軸枝を更新するときなど、太い枝を切る場面もあります。
そうした場合には、私は電動の剪定バサミを用意しておき、使い分けるのが良いと考えています。
細い枝は手動の剪定バサミ、太い枝は電動剪定バサミ。
すべてを一つの道具で済ませようとするより、作業内容に合わせて道具を使い分けたほうが、結果的に効率が良くなります。
剪定バサミのサイズは「手に合うもの」を選ぶ

もう一つ、意外と重要なのが剪定バサミのサイズです。
剪定バサミにはさまざまな大きさがありますが、私は、手のひらの長さと剪定バサミの長さが同じくらいになるものを一つの目安にすると良いと思っています。
このくらいのサイズだと、ハサミを握ったときに力を入れやすくなります。
もちろん、握力の強い人であれば、ワンサイズ大きなものでも問題ない場合があります。
しかし、「大きいほうが切りやすい」と考えて、必要以上に大きなものを選ぶのはおすすめしません。
手に合ったサイズを選ぶことで、自然に力を伝えやすくなります。
これは、切断能力だけの問題ではありません。
長時間使い続けたときの疲労にも関係してきます。
実際に使っている剪定バサミの一例

私がブルーベリーの剪定に使っているものの一例として、アルスコーポレーションのVS-Rシリーズがあります。
このタイプの特徴は、握るとグリップの一方が手の動きに合わせて内側に回転することです。
手の動きに合わせてグリップが動くため、手にフィットしやすく、力も伝えやすくなっています。
また、グリップ部分には低反発のゴムの受けがあり、手への負担を軽減してくれます。
ブルーベリーのように、細かな枝を何度も切る作業では、このような「握る」という動作そのものへの配慮が意外と大切です。
一方で、弱点もあります。
ハサミを大きく開いて太い枝を切ろうとすると、グリップが少し握りにくくなります。
そのため、私の感覚では、直径15mm程度以下の枝を中心に使うのが適しています。
つまり、このハサミ一丁ですべてを切ろうとするのではなく、細い枝を大量に処理するための道具として考える。
こうした「役割分担」が大切なのだと思います。
なお、前述のとおり主軸枝などの太い枝を切る場合は、電動の剪定バサミを併用しています。

切れ味を維持することも「道具選び」の一部

そして、もう一つ忘れてはいけないのが、剪定バサミの手入れです。
どんなに良い剪定バサミを選んでも、切れ味が悪くなれば作業効率は落ちます。
剪定作業をしたら、汚れを落とす。
毎日刃を研ぐ。
切れ味を維持する。
これだけでも、作業の「ラクさ」はかなり変わります。
剪定バサミは、使っているうちに少しずつ切れ味が落ちていきます。
その状態に慣れてしまうと、「こんなものだ」と思ってしまいます。
しかし、きちんと手入れをして切れ味を戻してみると、
「こんなに軽く切れたのか」
と感じることがあります。
道具は、買った時点で完成するものではありません。
手入れをしながら、長く使っていくもの。
私は、これも農業の道具選びでは大切な考え方だと思っています。
農業では「繰り返し」を見つけることが大切

ここまで読むと、単純な剪定バサミの選び方の話に思えるかもしれません。
しかし、私が農業をする中で道具について考えるとき、もう少し大きな視点があります。
それが、
「繰り返し」を見つけることです。
農業には、同じ作業を何度も繰り返す場面がたくさんあります。
ブルーベリーの剪定もそうです。
一本切って終わりではありません。
枝を確認する。
ハサミを握る。
切る。
次の枝を見る。
また切る。
これを何千回、何万回と繰り返していきます。
一回あたりでは、ほんのわずかな違いかもしれません。
しかし、回数が増えると、その差は大きくなります。
例えば、一回の作業がほんの数秒短くなったとしても、それが何千回も繰り返されれば、かなりの時間になります。
だからこそ、
「繰り返している作業は何か?」
を見つけることが、農業の生産性を高めるうえで重要になります。
家庭菜園と農業の大きな違いの一つ

これは、家庭菜園と農業の違いを考えると分かりやすいかもしれません。
家庭菜園では、自分が楽しむために作業をします。
多少時間がかかっても、それ自体が楽しみになることもあります。
一方、農業では、生産物を販売して事業として成り立たせる必要があります。
高単価の商品をつくり、小規模な農園として運営する場合でも、「量」がゼロになるわけではありません。
むしろ、単価が高くても、ある程度の量を生産し、収穫し、選別し、販売する必要があります。
そのため、
一つひとつの作業をどれだけ効率化できるか、負担を減らすことができるか
が重要になります。
そして、農業の場合、その多くは「繰り返し作業」です。
だからこそ、ほんの小さな改善にも意味があります。
「一番安い道具」ではなく「一番合う道具」を選ぶ

農業機械については、私は比較的慎重に考えています。
トラクターや草刈り機など、大型の農業機械は価格も高く、購入したら終わりではありません。
稼働率や維持費、保管場所、作業時間の短縮効果なども含めて、本当に導入する価値があるのかを考える必要があります。
一方で、剪定バサミのような小さな農具は、比較的導入しやすい価格です。
だからこそ、
「一番安いものを選ぶ」
という考え方ではなく、
「自分の作業に一番合うものを選ぶ」
という考え方をしても良いと思っています。
もちろん、高ければ良いということではありません。
自分が繰り返している作業に対して、
- 軽いほうが良いのか
- 切れ味が重要なのか
- サイズが合っているか
- 手への負担が少ないか
- 手入れしやすいか
- 長く使えるか
こうしたことを考えて選ぶ。
そして、購入したら手入れをして長く使う。
そのほうが、結果として良い投資になることがあります。
小さな改善を積み重ねる

農業では、大きな設備投資ばかりが生産性向上ではありません。
毎日使う道具を少し変える。
作業の順番を少し変える。
動線を少し変える。
道具を使い分ける。
手入れをして切れ味を維持する。
こうした小さな改善も、長い目で見ると大きな違いになります。
特に農業は、同じ作業を何度も繰り返します。
だからこそ、
「繰り返し」を見つけて、そこを少しずつ改善する。
私は、これが農業の生産性を高めるうえで、とても大切な考え方だと思っています。
良い道具は、毎日の仕事を少しラクにしてくれる

ブルーベリーの剪定は、華やかな作業ではありません。
収穫のようにお客様に直接見てもらうこともありません。
それでも、毎年必ず必要になる大切な仕事です。
そして、3カ月ほどかけてコツコツと続けていく作業だからこそ、その中で使う道具にはこだわる価値があります。
良い剪定バサミを選ぶ。
自分の手に合ったサイズを使う。
細い枝と太い枝で道具を使い分ける。
使ったら手入れをする。
そうした小さな積み重ねが、長い作業期間では大きな違いになっていきます。
農業を長く続けていくためには、作物や土だけではなく、日々の作業そのものと、そこで使う道具にどう向き合うかも大切なのだと思います。
これからブルーベリーの剪定シーズンが始まります。
今年も、たくさんの枝を一本ずつ見ながら、コツコツと剪定していきたいと思います。