競合はできればいない方がいい?

ビジネスを始めるとき、「競合」や「ライバル」という言葉を聞くと、どこか競争して勝たなければならないようなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
できればライバルがいない方がいい。
そう考える気持ちもよくわかります。
私自身も競争がとても苦手なので、農業を始めた当初は、同じような商品やサービスを提供する人がいることに、かなり抵抗がありました。
同じ地域に同じような農園があれば、お客様を取り合うことになるのではないか。自分の農園を選んでもらうためには、ほかの農園よりも優れていなければならないのではないか。
そんなことを考えていた時期もあります。
もちろん、お客様に商品やサービスを選んでいただくという意味では、競争が存在するのは間違いありません。
自分の商品やサービスの品質を磨き、その特徴をわかりやすく伝え、結果として選んでいただくことは大切です。
しかし、ここで少し視点を変えてみたいと思います。
それは、お客様から選ばれるという視点ではなく、「市場全体」という視点です。
競合が多いということは、市場が存在しているということ

ビジネスの世界では、競合がほとんどいない市場を「ブルーオーシャン」、競合が多く競争が激しい市場を「レッドオーシャン」と呼ぶことがあります。
言葉の印象だけで考えると、ブルーオーシャンの方が魅力的に感じるかもしれません。
競争相手がいなければ、お客様を独占できるようにも思えます。
しかし、ここには注意点があります。
競合がいないということは、そもそもお客様が少ない、あるいは市場そのものがまだ十分に形成されていない可能性もあるからです。
例えば、世の中に全く存在しない商品を開発したとします。
その商品がどれほど優れたものであっても、最初からお客様がその価値を理解してくれるとは限りません。
商品の存在を知ってもらい、使い方を説明し、必要性を理解してもらう。

場合によっては、商品を購入する習慣そのものをつくる必要があります。
これは非常に大きな労力が必要です。
市場が形成されるまでに長い時間がかかれば、その間の事業を維持するための資金も必要になります。
もちろん、新しい市場をつくることには大きな可能性があります。しかし、それには相応の資本や時間、そしてリスクを引き受ける覚悟が必要です。
特に、小規模事業者の場合は、すでに一定のお客様がいて、売り上げが生まれている市場に参入する方が、現実的な選択になることも多いと思います。
つまり、競合が多いということは、見方を変えれば、すでにお金を払ってでも利用したいというお客様が存在しているということです。
市場がある程度できあがっているからこそ、その中で自分らしい特徴を出していくことができます。
ライバルが市場を大きくしてくれる

競合やライバルについて、もう一つ大切なことがあります。
それは、同業者の活躍が市場全体を大きくすることがある、という点です。
例えば、ブルーベリーを考えてみます。
ブルーベリーという果物が、今よりももっと一般的になり、多くの人に知られるようになったらどうでしょうか。
ブルーベリーを食べる人が増えれば、ブルーベリーを購入する機会も増えていきます。
ブルーベリー狩りという体験が一般的になり、旅行やレジャーの選択肢として認知されるようになれば、ブルーベリー農園を訪れる人も増えていくでしょう。
もちろん、お客様がすべての農園を利用するわけではありません。
最終的には、それぞれの農園が選ばれることになります。
しかし、そもそもブルーベリーという作物や、ブルーベリー狩りという体験が知られていなければ、お客様に選んでもらう機会そのものが少なくなってしまいます。
つまり、同業者がそれぞれの個性を発揮しながら活躍することで、業界全体の認知度が高まり、市場が育っていく可能性があるのです。
その結果、自分の事業にもチャンスが増えていきます。
競合が増えることは、自分のお客様を奪われることだけではありません。
市場そのものを育ててくれる存在でもあるのです。
ライバルの足を引っ張っても、自分の売り上げは増えない

一方で、自分の売り上げを増やすために、ライバルの足を引っ張ろうとする人もいるかもしれません。
競合する相手がいなくなれば、自分のところにお客様が集まるのではないか。
そう考える気持ちも理解できます。
しかし、仮に競合する相手がいなくなったとしても、自分の売り上げが増えるとは限りません。
そもそも、その相手がいなくなることで、お客様がその市場から離れてしまう可能性もあります。
また、同業者同士の関係が悪くなれば、業界全体の印象を損なうことにもつながります。
自分の利益を優先するあまり、市場そのものを小さくしてしまっては、長期的に見ればマイナスになるでしょう。
小さな事業者ほど、個々の事業者だけで市場を育てることには限界があります。
だからこそ、同業者がそれぞれの立場で活躍することには、大きな意味があると思います。
競合と比較するのは、自分の特徴を確認するため

もちろん、私自身も同業者の方と比較することはあります。
ただし、それは相手に勝つためというよりも、自分の農園の特徴を確認するためです。
自分の商品やサービスには、どのような特徴があるのか。
その特徴は、お客様にわかりやすく伝わっているのか。
ほかの農園と比較したときに、自分たちが提供できる価値は何なのか。
そうしたことを確認するために、競合の存在はとても参考になります。
例えば、同じブルーベリー農園であっても、栽培方法や品種、収穫体験の内容、商品の販売方法など、それぞれに違いがあります。
すべての農園が同じ方向を目指す必要はありません。
むしろ、それぞれの農園が個性を発揮することで、お客様の選択肢が増え、ブルーベリーそのものの魅力も広がっていくのではないでしょうか。
競合がいるからこそ、自分の特徴が見えてくる。
そして、その特徴を磨いていくことで、自分らしい事業をつくることができます。
ライバルに勝つより、市場を一緒に育てる

小さなビジネスを考えるとき、競合やライバルは、必ずしも敵ではありません。
もちろん、お客様から選んでいただくための努力は必要です。
しかし、同業者を排除したり、相手よりも優れていることばかりを考えたりする必要はないと思います。
すでに市場が存在していることは、それだけで大きな価値があります。
その市場を多くの人に知ってもらい、利用してもらい、さらに魅力的なものにしていく。
その中で、自分の商品やサービスの品質を磨き、自分らしい特徴を発揮していく。
こうした考え方の方が、小規模事業者にとっては、無理なく長く続けられるビジネスにつながるのではないでしょうか。
ライバルがいるからこそ、市場が育つ。
そして、市場が育つからこそ、自分にもチャンスが生まれる。
そう考えると、競合やライバルは、避けたい存在ではなく、一緒に市場を育てていく大切な存在なのかもしれません。
