農業の「オフシーズン」の発信こそ大切な理由|小さな農業の販売戦略

「シーズン以外は、何をしているんですか?」

ブルーベリー農園をやっていると、そんな質問をされることがあります。

たしかに、ブルーベリーは収穫シーズンが終わると、剪定などの作業を除けば、夏の収穫期と比べて作業量は一気に少なくなります。

農園だけを見ると、

「なんだか、何もしていないように見える」

という時期でもあります(笑)。

でも、私自身は、シーズン以外にもずっと「販売活動」をしていると考えています。

もちろん、実際に商品を販売しているわけではありません。

ここでいう販売活動とは、次のシーズンに商品を選んでもらうための、信頼を積み上げる活動のことです。

目次

私は「小さな農業」をしています

私が行っているのは、いわゆる「小さな農業」です。

大きな機械を使って一気に生産量を増やしたり、大人数のスタッフを雇って大規模に生産したりするスタイルではありません。

ざっくり言えば、

  • 初期投資やランニングコストをできるだけ小さくする
  • 収益化までには多少時間をかける
  • 少ない人数で運営する
  • 大量生産ではなく、品質を重視する
  • 少量でも、きちんと価値を感じてもらえる商品をつくる

という考え方です。

こうした農業では、規模を大きくして価格競争をするというよりも、「この農園から買いたい」と思ってもらうことが重要になります。

そのためには、商品そのものだけではなく、

「この農園は、どんな考え方でつくっているのか」

「どんな人が育てているのか」

「どんなことを大切にしているのか」

といったことを知ってもらう必要があります。

高品質なものをつくれば、それだけで売れるわけではない

少量でも品質の高いものをつくる。

これは、小さな農業にとって大切な考え方のひとつです。

ただし、ここには一つ問題があります。

「品質が高い」ということは、つくっただけでは伝わらない。

ということです。

一般的な市場出荷では、どうしても価格や規格など、比較しやすい基準で商品が評価されます。

一方で、個人のお客様に直接販売したり、こだわりを理解してくれる販売先と取引したりする場合には、

「なぜ、この商品なのか」

を理解してもらうことができます。

そのためには、販売する瞬間だけではなく、普段から情報を発信しておくことが大切です。

私は、これを「信頼の貯金」のようなものだと考えています。

シーズン直前だけ発信するのは、「用がある時だけ連絡する人」に似ている

たとえば、普段はまったく連絡をしてこない人から、突然、

「今年もブルーベリーができました!買ってください!」

と言われたら、少し不思議に感じるかもしれません。

日常の人間関係で考えると、

「普段は何の連絡もないのに、自分に用事がある時だけ連絡してくる」

という状態に近いからです。

農園の発信でも、これと似たことが起こります。

シーズン直前になって突然、

「予約開始しました!」

「今年のブルーベリーができました!」

「販売しています!」

と発信する。

もちろん、これ自体が間違っているわけではありません。

私自身も、以前はそのような発信をしていました。

むしろ、収穫シーズンが近づけば販売のお知らせをするのは当然です。

ただ、長く続けていくことを考えると、「売りたい時だけ発信する」という状態では、なかなか信頼関係をつくることができません。

不思議なことに、日常の人間関係では当たり前のことなのに、ビジネスになると、なぜかこのような発信をしてしまうことがあります。

だからこそ、改めて考えてみる価値があるのだと思います。

オフシーズンに何を発信するのか

では、シーズン以外に何を発信すればよいのでしょうか。

私は、必ずしも商品の宣伝をする必要はないと思っています。

むしろ、

「商品以外の価値を提供する」

ことが大切です。

例えば、

  • 栽培について知ってもらう
  • ブルーベリーの面白さを伝える
  • 農園で起きている変化を紹介する
  • 自分がどんなことを考えて農業をしているのかを書く
  • 栽培技術や知識を紹介する
  • 農業や農村での暮らしについて考えていることを発信する

といったことです。

もちろん、商品の紹介をしてはいけないという意味ではありません。

SNSなどで商品を宣伝することは、当然必要です。

ただ、SNSを見ている人が、いつも「商品の宣伝を見たい」と思っているわけではありません。

むしろ、

「これは知らなかった」

「なるほど、そういう考え方があるのか」

「この農園、面白いな」

「この人の発信は役に立つな」

と思ってもらえることのほうが、長い関係につながりやすいのではないでしょうか。

「自分が言いたいこと」だけにならないようにする

発信を続けていると、どうしても、

「自分が伝えたいこと」

に意識が向きます。

もちろん、それは発信の原動力になります。

でも、それだけになってしまうと、

「自分はこれを言いたい」

という一方通行の発信になりやすい。

そこで、

「これを見た人は、何を得られるだろう?」

「この人は、何を知りたいのだろう?」

と一度考えてみる。

この小さな視点の違いが、発信の内容を大きく変えるように思います。

私は、発信そのものを「サービス」の一つとして考えてもよいのではないかと思っています。

商品を購入してもらう前から、すでに何かを提供している。

その積み重ねが、少しずつ「この人から買ってみたい」という気持ちにつながっていくからです。

最初は「発信力のある場所」を借りてもいい

もちろん、最初から自分の発信だけでお客様を集めるのは簡単ではありません。

私自身、農園を始めた頃は、食べチョクのような、こだわりを持った生産者が集まり、すでに多くのお客様がいるプラットフォームを活用することもおすすめしています。

こうした場所を利用することで、自分一人では届かなかったお客様に商品を知ってもらうことができます。

これは、小さな農業を始めたばかりの時には、とても有効な方法です。

ただ、長期的に考えると、やはり自分自身の発信力が重要になってきます。

プラットフォームに依存するのではなく、

「この農園だから買いたい」

という関係を少しずつつくっていく。

そのためには、やはり時間をかけた発信が必要になります。

シーズン中の販売は、オフシーズンから始まっている

ブルーベリーの剪定の写真

ブルーベリー農園では、どうしても収穫シーズンの様子が目立ちます。

実際にブルーベリーが実り、

お客様が農園に来て、

収穫して、

商品を発送する。

そうした「目に見える仕事」に注目が集まるのは、当然のことだと思います。

でも、その時期に販売できているのは、シーズンになって突然何かを始めたからではありません。

その前から、

「この農園はこういう考え方でやっています」

「こんなものを育てています」

「こんなことを大切にしています」

という情報を少しずつ届けている。

その積み重ねがあるからこそ、シーズンになった時に、

「今年も買おう」

「今年は食べてみよう」

と思ってもらえるのだと思います。

そう考えると、シーズン中の販売は、オフシーズンから始まっているとも言えます。

小さな農業ほど「コツコツ」が大切

大きな農業では、生産量や設備、人員など、規模そのものが大きな力になることがあります。

一方、小さな農業では、同じことをするのは難しい。

だからこそ、

「少しずつ知ってもらう」

「少しずつ信頼してもらう」

「少しずつファンになってもらう」

という積み重ねが重要になります。

これは、すぐに結果が出るものではありません。

1回発信したからといって、すぐに商品が売れるわけでもありません。

でも、毎年、毎月、毎日のように積み重ねていくと、少しずつ関係ができていきます。

そして、その関係が、シーズンになった時の販売を支えてくれる。

私は、これも「小さな農業」の大切な仕事の一つだと思っています。

「何もしていないように見える時期」こそ、次のシーズンをつくっている

ブルーベリーの収穫が終わると、農園は静かになります。

剪定などの作業はありますが、夏のような忙しさはありません。

外から見ると、「仕事が少なくなった」ように見えるかもしれません。

でも、その間にも、

畑を見て、

栽培を考え、

来年のことを考え、

そして発信する。

そうして少しずつ、次のシーズンの土台をつくっています。

だから私は、オフシーズンを「農業の休みの時期」とは考えていません。

次に販売するための信頼を、少しずつ育てる時期。

そんなふうに考えています。

小さな農業、小さなビジネスにとって、コツコツと積み上げていく信頼関係は、決して派手ではありません。

でも、それこそが、長く続けていくための大切な「資産」なのだと思います。

そして、もしかすると、

「シーズン以外は何をしているんですか?」

という質問への答えは、

「次のシーズンに向けて、信頼を育てています」

なのかもしれません。

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この記事を書いた人

脱サラ元公務員。
13年働いた県庁を辞めて、農業法人を経て独立。
ブルーベリー農園を経営しています。

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