農業の「収穫物」と聞いたら、何を思い浮かべるでしょうか。
もちろん、野菜や果物などの農作物がまず思い浮かびます。
しかし、農業を仕事として続けていると、もう一つ、毎日のように少しずつ積み上がっていく「収穫物」があることに気づきます。
それが、経験です。
農業の現場では、経験も毎日のように収穫されている

農業では、毎年同じように作業をしているように見えても、実際にはまったく同じ状況が繰り返されるわけではありません。
天候が違う。
土の状態が違う。
樹の状態が違う。
作業する時期が少し違う。
そして、前年とは違う結果が出る。

その一つひとつを観察しながら、
「今年はここが違ったな」
「この時期に作業したら、こうなった」
「この樹には、このやり方が合っていた」
といった経験が少しずつ蓄積されていきます。
こうした経験は、収穫した果実のように箱に詰めて販売することはできません。
でも、長く農業を続けていくうえでは、とても大きな財産になります。
今は「情報がない」ことより「情報が多すぎる」ことが問題になる

少し前までなら、農業を始めようと思っても、必要な情報を探すこと自体が大変でした。
本を探したり、詳しい人に聞いたり、実際に農家を訪ねたり。
「知っている人」と「知らない人」の間には、それだけで大きな差がありました。
ところが、今は状況が大きく変わっています。
例えば「ブルーベリーの育て方」と検索すれば、たくさんの情報が出てきます。
動画もあります。
ブログもあります。
SNSにも情報があります。
さらに今では、AIに質問すれば、膨大な情報を整理して、分かりやすくまとめてくれることもあります。
つまり、以前に比べて「情報を手に入れること」そのものは、かなり簡単になりました。
これは、とても便利なことです。
一方で、新しい難しさも生まれています。
情報が多すぎるのです。
「知っていること」と「できること」は違う

農業に限った話ではありませんが、
「知っている」
ことと、
「実際にできる」
ことの間には、大きな差があります。

例えば、剪定について検索すれば、
「どの枝を切るのか」
「どの時期に剪定するのか」
「どんな樹形を目指すのか」
といった情報を知ることはできます。
しかし、実際に目の前にある樹を見て、
「この枝を残して、この枝を切る」
と判断するのは、また別の問題です。
なぜなら、現場には教科書通りではないことがたくさんあるからです。
樹によって違う。
年齢によって違う。
前年の生育によって違う。
栽培環境によっても違う。
そこで必要になるのが、単に知識を増やすことだけではなく、知識を自分の現場に合わせて使える形にすることです。
私はこれを「自己適用」と考えています。
情報を「自分の知恵」に変える

同じ情報を知っていたとしても、それを自分の農園でどう使うのか。
ここには、かなり個人差があります。
実際にやってみる。
結果を見る。
うまくいかなかった理由を考える。
少し変えてみる。
また試す。
そうしていくうちに、最初は誰かから得た「情報」だったものが、自分自身の「経験」に変わっていきます。
そして、その経験がまた次の判断に役立つ。
この繰り返しによって、単なる知識ではない、自分なりの「使える知恵」ができていくのだと思います。
だからこそ、農業を続けている人にとって、毎年の経験には大きな価値があります。
「経験」は、情報化時代だからこそ価値が高まる
情報が少なかった時代には、「知っていること」そのものに価値がありました。
しかし、誰でも大量の情報にアクセスできるようになった現在では、それだけでは差がつきにくくなっています。
むしろ、
その情報をどう解釈するのか。
自分の環境にどう適用するのか。
実際にやってみて、何が起きたのか。
こうした部分に価値が移ってきているように感じます。
Googleも現在、ユーザーに役立つコンテンツを考えるうえで、「実体験や深い知識が明確に示されているか」「独自の情報、分析、研究があるか」といった点を挙げています。E-E-A-Tについても、Experience(経験)を含む複数の要素から、コンテンツの信頼性や有用性を評価する考え方が示されています。
もちろん、「経験がある記事なら検索順位が上がる」という単純な話ではありません。
それでも、情報をただ集めて並べるだけではなく、実際に経験したことから得られた独自の知見を、誰かの役に立つ形で伝えることには、今の情報環境だからこその意味があるのだと思います。
知識を「使えるもの」にして、誰かに渡す

そう考えると、農業で得られるものは、農作物だけではありません。
農作業を通して得られた経験。
失敗したこと。
うまくいったこと。
毎年少しずつ変えてきた工夫。
そして、それらを通して身についた判断力。
こうしたものも、農業を続けることで積み上がっていく「収穫物」なのではないでしょうか。
そして、その経験を自分の中だけに留めるのではなく、誰かに伝える。
自分が得た経験を、別の人が次の挑戦に使える形にする。
そうすることで、一人の農業者が積み重ねた経験が、別の人の役に立つ知恵へと変わっていきます。
知っていることを、実際の現場で使えるものにする。
そして、
使えるようになったものを、誰かにシェアする。
これからの情報化時代には、こうした「経験の循環」が、ますます大切になっていくのかもしれません。
農業の経験を、次の人へ

私自身、ブルーベリー栽培を続ける中で、剪定についても毎年たくさんの経験を積み重ねてきました。
もちろん、書籍やインターネットから得られる基本的な知識も大切です。
ただ、実際の樹を前にすると、
「この枝はどうするか」
「どこまで切るか」
「今年はどんな樹に仕立てていくか」
という判断が必要になります。
こうした判断は、情報を読むだけではなかなか身につきません。
実際に樹を見て、考えて、切って、その後の生育を見ていく。
その繰り返しの中で、少しずつ自分の判断ができるようになっていきます。
そこで今回、これまで自分の農園で積み重ねてきた剪定の経験を、実際の樹を見ながらお伝えする「ブルーベリー剪定講座」を開催します。
午前は剪定の考え方を学び、午後は実際の農園で樹を見ながら剪定を行います。
「剪定の方法を知りたい」という方だけでなく、
知識を自分の樹にどう当てはめればいいのか分からない
という方にも、ぜひ参加していただきたい講座です。
農業で得られる「経験」という収穫物を、次の人へ渡していく。
そんなことも、農業を仕事として続けていく一つの意味なのかもしれません。
▼ブルーベリー剪定講座の詳細はこちら
