脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
私は現在、ブルーベリーを栽培し、ヘーゼルナッツを栽培しているほか、家庭消費用に野菜も多種類栽培しています。
今回は、自然栽培をしている家庭菜園の畑の土について書いてみました。
植物がそこにあり続けることで「作られる」土
農作物を栽培するときに「土作りが大切」という言葉を聞くことが多いと思います。
土、土壌は鉱物や粘土などの「物質」だけではなく、そこにいる様々な生物の活動により化学的にも、団粒構造といった立体構造的にも、植物が生育できるように形づくられていく、まさに自然界に究極の産物だと思います。
栽培作物がよく育つには、その土の状態を整えることが最も大切。
本当にその通りだと思います。
栽培方法や考え方によってやり方は様々だと思いますが、
私の場合は、植物やその周辺の生物がもともと土を整える能力があることに着目して、
なるべくその循環を止めないことで、土を整えています。
正確には、生き物たちに「作ってもらう」整えてもらっています。
植物が必要なものは全部もともとあるもの
(植物の根と微生物の活動などにより、土壌が生物的もの、物理的にも、化学的にも良くなっていく)
植物が利用する物質には、酸素や水や窒素などのように、大気や雨などから取り入れられるもの、
リン酸などのように、種や実、動物の糞などから、供給されるもの、
カリウムやマグネシウム、カルシウム、鉄、などなど・・・のようなミネラルがあります。
一般的に植物に必要な元素は17種類(または18種類)と言われています。
窒素は大気に多く含まれるため、主に窒素固定細菌やマメ科の植物の根粒菌などから土壌に取り入れられます。
リン酸などは、動物の死骸や糞、発芽しなかった雑草の種などからも供給されます(雑草の種は9割以上発芽せずに土壌に供給されます)。
カリウム、マグネシウム、カルシウムなどは、植物の体、特に根に多く含まれるため、植物が枯れて、地下部の根が枯れることで、自然と供給されます。枯れた地上部からも供給されます。
植物に含まれる窒素は、硝酸態になって水で流出したり、気体になり、大気中に出て行ってしまうものもありますが、ミネラル分は基本的には、枯れた場所に残ります。
もともとは、地下深くの鉱物由来のものであったものですが、火山活動などで表面に出てきて、植物が取り出して体内に入れると、生物の間で循環されるようになります。
植物は土壌微生物との協働により、これらの物質を利用しています。
多くの植物の根には菌根菌が共生していますが、代表的なものは、多種類の植物と共生するAVA菌根菌と呼ばれるものす。
ちなみに、ブルーベリーにもエリコイドという菌根菌の系統が共生していますが、ブルーベリーにもAVA菌根菌は共生するようです。
菌根菌は、落ち葉などを分解する腐生菌と同じ糸状菌というカビやキノコの仲間ですが、
腐生菌とは異なり、生きた植物に寄生しないと生きられないので、植物が枯れてしまうと、根のあった付近で、カプセルのようなカタチを作り、胞子の形で休眠します。
そして、またその付近に何等かの植物の根が出て来ると、発芽して、菌糸を伸ばし、寄生します。
植物の根が出す物質に反応して、菌根菌の発芽が促されるという説もあります。
それくらい、菌根菌との共生は、あらゆる植物にとって大切なことになります。
こうして、植物の根を地中に残し続けることで、菌根菌が働きやすくなり、植物の生育が年々よくなっていくことになります。
自然環境がうまく循環していれば、基本的には、植物が必要なものは、全部そこにあるのです。
考えてみれば、当たり前のことかもしれません。
植物は動くことはできません。
大気や水、そこにあるミネラル、微生物や動物を利用して、たくましく生き延びてきたのだと思います。
自然栽培で工夫していること
(↑四葉系キュウリ、無肥料でもかなり収穫できます)
栽培作物や畑という環境では少し事情もかわってきます。
収穫部分が多くなるよう品種改良された作物を育てることになり、さらにその作物を選択的に残さなくてはなりません。
畑にした時点で生物の数もかなり減ってしまいます。
どのような畑でも、目的をもたせた時点で、「不自然な環境」ということになります。
そのため、少し工夫が必要になります。
私の場合は、まず品種を選ぶ際には、基本的に固定種を選び、無肥料栽培でも育ちやすいものを試しながら、選択しています。
(↑ブラジルミニ 無肥料でも育ちやすい品種)
慣行栽培とルールが違うので、そこで優秀な品種も当然変わってきます。
基本的には樹勢の強いもの、樹勢の強さは、農業的にみると少肥で育つということと、ほぼ同じ意味になるようです。
そのような品種は、最近は、苗としては販売していないことも多いので、自分での苗づくりも必要になります。
私の場合は、結果的にやや昔の品種を選ぶことが多いです。
種とりをすることで、よりどの土地にあった作物になっていきます。
(↑種取りも重要)
また、相性のよい野菜を混ぜて植えたり、影響のないところは雑草も残したりしています。
収穫した残渣もそのまま畑に残し、根も刈り取って、地中に残します。
こうすることで、地中にはミネラルが循環されもどっていきます。
土も耕さずに不耕作にしながら、畝には刈草を敷き、土壌生物や土壌構造を守ります。
(↑刈草のマルチングをしながら、土をよくしながら育てる)
作物を作りながら、植物や植物をとりまく生物に土を「作ってもらう」という感覚で、邪魔をしないように気を付けています。
除草剤や農薬は使っていませんが、安全性というよりは、私としては生物の循環をとめたくないという理由の方が大きいです。
これはブルーベリーやヘーゼルナッツについても、同様に考えています。
収穫物を持ち出すため、肥料が必要だという意見もあるかと思いますが、収穫物は、植物の体のごく一部であることが多く、作物が育った時点で、もとより、ほとんどの物質は増えているので、収穫の影響は限定的だと思います。
数年たつと育てやすくなる土
そのようなことを続けながら、数年がたつと、だんだん土が整ってきます。
耕されて、土だけになっている状態からスタートすると、短くて2~3年、造成されたりして、土壌が壊れていたり、水田などの特殊な用途に使っていたような土地は、もっと時間かかるように思います。
造成されたりして、土壌が0からのスタートの場合は、いきなり始めずに、まずは緑肥などを栽培するのも一つの方法かもしれません。
土壌酸度(pH)なども、ミネラルのバランスが整ってくれば、結果として、作物が育ちやすくなるpH6.5前後に落ち着きます。
石灰資材などでpHを整えなくても、ミネラルバランスが整うと自然とpHは適正値によっていきます。
引っ越してきたばかりの頃は家庭菜園の庭の畑のpHは、5.5~6.0程度でした。
石灰資材などは使っていませんが、現在はpH6.5(6.2~6.6)程度になってきています。
(↑土壌のミネラルバランスが整うと、石灰資材を入れなくても、pH6.5前後になることが多い)
枯れた植物の地上部、根、などがミネラルバランスを整えてきてくれたのだと思います。
後土壌が肥えてくれば、生えてくる雑草の種類もかわってきて、ハコベやオオイヌノフグリなどが増えてきます。
ここに引っ越してきたときは、最初は、イネ科やスギナばかりだったのが、3年目で、ハコベなどが増えてきました。
慣行栽培で、耕して土が柔らかく、肥料分が残っていても、ハコベは増えてきますが、とくに肥料を与えていないのに、自然とハコベが増えてきたのは、土が自然に整ってくれた証拠です。
(↑刈草のマルチングの下には、たくさんのハコベが生えてきています)
今までは、引っ越しなどが多く、数年でちょうど整ってきたときに、違う畑になってしまうことも多くありました。
今はやっと、同じ場所で続けられるようになり、それがすごくうれしく感じています。
このように、土が整うまで少し時間がかかるので、自然栽培をあきらめてしまう方も多いのですが(私もよくくじけそうになっていました・・・)、
育て方にあった品種や作物を選び、植物が生育し続けることで土が整い、無肥料無農薬での栽培も可能になってくるのではないかと思います。
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