脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
ブルーベリー栽培では、ヒヨドリなどの小鳥の被害を受けることが多く、防鳥ネットなどの対策をとることが一般的です。
しかし、ブルーベリーの森あづみのでは、防鳥ネットを設置していません。
小鳥がほとんどやって来ないからです。
防鳥ネットは高価です。
設置するための棚や広い面積の場合ネットも高価になります。
また、毎年の設置・撤去の作業がかなり大変です。
私が以前働いていた農業法人でも、面積がかなり広かったこともありますが、すごい作業量がありました。
当時、農薬の散布の次くらいに嫌な作業でした。
自分で経営する時は、農薬と防鳥ネットをやりたくないと思っていました。
現在、その両方をやらずに運営できていますので、大変ありがたいことです。
しかし、何故、小鳥があまりやってこないのか、はっきりとはわかっていません。
何故「防鳥ネット無し」でも、小鳥がくることが少ないのか…
私が学生の頃研究していたニホンザルの行動様式などにも触れながら、考察してみました。
「防鳥ネット無し」でも小鳥がやってこない理由
農園が開けて見通しのいい環境であること
ブルーベリーの森あづみの立地はかなり開けている環境です。
周辺には、大きな樹などの小鳥が逃げ場として利用できるものが少ない状態です。
小鳥を観察していると、いきなり餌にやってくるわけではなく、身を隠す大きな樹などを経由していきながら、徐々に近づいていくことがわかります。
ブルーベリーの周辺に小鳥の逃げ場が少ないことが、小鳥があまりこない原因の一つだと考えられます。
建物の屋根などは、地上の天敵からは逃げられますが、猛禽類などには標的にされてしまいます。
小鳥は少し内部に身を隠すことのできる、枝が茂った大きな樹、あるいはそれに類似する構造物のような「逃げ場」必要なのではないかと思います。
農園が猛禽類の狩り場に位置すること
ブルーベリーの森あづみのは山麓に接する扇状地にあります。
大型の猛禽類は、森林に営巣して、このように開けた場所で狩りをします。
ブルーベリー農園の立地が、大型の猛禽類の狩り場と重なっていることも、小鳥があまり来ない要因の一つではないかと思います。
実際に、トンビやオオタカなどを目にすることがあります。
猛禽類が見られる日は、小鳥の声がより遠くに聞こえて、猛禽類がいなくなっても、半日から一日以上は小鳥の声が遠く、静かな気がします。
かなり影響力があるように思います。
ニホンザルとの共通点
サルも「餌場」&「逃げ場」の両立する場所に生息
私が学生の時に、栃木県日光市の人工林地帯に生息しているニホンザルについて研究していたころがありました。
ニホンザルの本来の分布は、エサの豊富な広葉樹林ですが、年々、山麓の人工林地帯へ分布を拡大させており、人間との距離も近くなってしまっている状況でした。
その要因を、ラジオテレメトリーによる行動圏調査などを行い研究する内容でした。
結果的には、人工林を主な行動圏とするサルの群れは、人工林内では、開けた環境と接する林縁部から50m以内に集中して生息していました。
エサの少ない人工林で生活するサルの群れは、田畑があったり、つる植物の多い、しかも、すぐに逃げられる林縁部をうまく利用していることがわかりました。
鳥も、エサにまっしぐらにくるわけではなく、安全な「逃げ場」と「餌場」が両立する場所を慎重に選んでくるのではないかと、考えたのは、このような背景がありました。
緩衝帯の整備は重要
少しブルーベリー農園に話を戻しますが、あるとき、隣の畑にセイタカアワダチソウが2mくらい伸びて、スズメがそこに身を潜めて、拠点にしているとことがありました。
耕作者の方はやや遠方だったので、連絡をとり、セイタカアワダチソウを刈らせてもらうことにしました。
その後は、スズメはそこを拠点にしなくなりました。
また、昨年営業中に、アナグマをみかけたことがありました。
アナグマは急いで、道を挟んで隣接する耕作放棄地の草むらへ逃げ込みました。
このような、緩衝帯のような逃げ場は、動物を保護する上では大切です。
逆に人間と動物との距離をとりたい場合は、下草や灌木を刈り取るなどの整備が重要です。
鳥緩衝帯の整備はあらゆる野生鳥獣に一定の効果があると思います。
ブルーベリー収穫時期の要因
ある時、5羽ほどのスズメを見ることがありました。
大群ではないですが、チャレンジャーの精鋭たちなのかもしれません。
あまり被害がないので積極的には追い払いませんでしたが、8月の中旬以降になると全くこなくなりました。
かわりに周辺の水田でスズメをみかけることが多くなりました。
スズメとしては田んぼの稲の方が魅力的だったようです。
ブルーベリーの森あづみのではラビットアイ系ブルーベリーをメインに栽培しているため、長野県では8月以降に収穫時期となります。
8月以降の時期は、他の果物や稲などのエサとなる作物が増えてくる時期でもあります。
収穫時期も影響があるかもしれません。
「鳥が気が付いていない」説はありえない
鳥があまり来ないという話をすると、よく「鳥がまだ気が付いていないんだよ。そのうち来るようになる。」と言われます。
しかし、私は、「鳥が気が付いていない」ことはあり得ないと考えています。
初めて収穫をむかえるポット栽培のブルーベリーを数本庭においた直後から鳥は来ました。
実の時期の鳥や花の時期の蜂のセンサーはものすごく、この規模のブルーベリー栽培「気が付いていない」ということの方が不自然です。
ブルーベリー的には花に蜂が来てほしい、実を鳥に食べて、種を運んでもらいたいので、蜂や鳥を呼んでいるとも言えます。
今後変化していく可能性
今後、ブルーベリーが成長して、大きな樹となり枝も茂ってくると、ブルーベリーそのものが、逃げ場となる可能性があります。
また、ブルーベリー以外のナツメやクワ、グミなどの果樹を育てているため、それらの樹が成長してくると、それも逃げ場となる可能性があります。
しかし、ブルーベリーの森あづみのでは、豊産生のラビットアイ系ブルーベリーをメインに栽培しています。
ラビットアイ系ブルーベリーは、特に地植え栽培の場合、北部ハイブッシュ系ブルーベリーの2~3倍以上の収量となります。
現在のブルーベリー栽培本数のポテンシャルを考えると、将来的に、
観光農園の来客数、収穫にかけられる労働力といった収穫できるキャパシティーをはるかに超える収量が予想されます。
樹が成長し、鳥の逃げ場と成り得るサイズになった頃には、
収量も増えてくるため、逆に収穫しきれないものも増えてくると予想されます。
その頃には、収量でカバーできるのではないかと、考えています。
ちなみに、グミやクワ、ナツメなども今のところ、小鳥被害はありません。
これらの果樹は、あまり好まないのかもしれません。
まとめ
小鳥がほとんどやってこない理由は、
今のところ、「逃げ場が確保できない環境」「猛禽類などの天敵が多い環境」が主な要因ではないかと推察されます。
この点はニホンザルも鳥もおそらく同じではないかと思います。
防鳥ネットは設置費用や作業量からみても、経営面では大きなウエイトを占めます。
もちろん、立地などの条件によっては、必要となることもあると思いますし、実の品質確保など経営上の考え方にもよるものと思います。
しかし、このように環境条件によっては、かならずしも必要でない場合もあるのではないかと私は考えています。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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