脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
ブルーベリーの森あづみのでは、ブルーベリー「ど根性栽培」という栽培方法に取り組んでいます。
ど根性栽培は、千葉県木更津市の江澤貞雄(エザワフルーツランド)さんが提唱するブルーベリーへの過度な人間の干渉を「しない」ことで、
ブルーベリー(特にラビットアイ系品種)の潜在能力を発揮させる栽培方法です。
ど根性栽培の詳細については、関連記事をご覧ください↓
「ど根性栽培」では、気候条件が許す限りは、ラビットアイ系ブルーベリーを積極的に導入します。
ブルーベリーの森あづみのでも、95%がラビットアイ系の品種です。
ラビットアイ系品種のブルーベリーは一般的には「暖地向き」と言われており、長野県のような寒冷地には適さないと言われています。
実際、私の知る限り長野県でラビットアイ系ブルーベリーを育てている農園は、きわめて少数で、ほとんどがハイブッシュ系ブルーベリーを中心に栽培されているます。
しかし、実際にラビットアイ系を育ててみると、長野県安曇野市でも十分に栽培することは可能であり、その魅力に魅了されます。
今回は、ラビットアイ系ブルーベリーの耐寒性と寒冷地で育てるメリットとデメリットについて書いてみました。
魅力がたくさんラビットアイ系ブルーベリー
日本で栽培されているブルーベリーの栽培品種には主に、「ハイブッシュ系(北部、南部)」と「ラビットアイ系」があります。
ハイブッシュ | ラビットアイ | 備考 | |
樹の大きさ | 1~2m | 2m以上 | |
樹勢 | 中 | 強い | |
果実の大きさ | 中~大 | 小~中 | |
果実の収量 | 少 | 多 | |
果実の糖度 | 中 | 高 | |
成熟時期 | 6月下旬から | 7月下旬から | 長野県安曇野市 |
耐寒性 | 優れる | 劣る | |
耐暑性 | 劣る | 優れる |
(出典:ブルーベリーをつくりこなす(江澤貞雄著、農文協)図4-4より 一部加筆)
これまで、ラビットアイ系ブルーベリーはどちらかと言えば、ノーザンハイブッシュより品質が劣ると言われてきました。
しかし、私は断然ラビットアイ系推しです☆
ノーザンハイブッシュ系は初夏の爽やかな酸味と甘みとの絶妙のバランスを楽しんだり、大粒を楽しんだりと、パンっと張ったような食感なども素晴らしいです。
しかし、ラビットアイ系もひけをとらない魅力があります。
ノーザンハイブッシュ系と比較すると、若干、皮や種の食感が残る場合もありますが、完熟した時の糖度はノーザンハイブッシュより高く、完熟すると深いうま味があり、濃くて美味しいです。
収量もノーザンハイブッシュの2~3倍程度収穫できますので、摘み取り園にも向いています。
ラビットアイ系をメイン選んだのは、栽培方法による理由のほか、そもそも自分がラビットアイ系のブルーベリーの味も大好きだったからです。
あと、摘み取り園をオープンして、わかったことですが、
ラビットアイ系は「お子さんに好まれる味」だということでした。
ラビットアイ系の耐寒性について
ラビットアイ系ブルーベリーは定説より耐寒性がある
ラビットアイ系品種は耐寒性が弱く、暖地向けと言われています。
ハイブッシュ系がリンゴの栽培適地、ラビットアイ系がミカンの栽培適地に例えられる場合があります。
しかし、実際には、定説ほどはラビットアイ系の耐寒性は弱くないというのが、栽培してみた実感しました。
少なくとも、リンゴとミカンの例えは言い過ぎてはないでしょうか。
寒さで樹の本体が枯れることは全くありませんでした。
当初から、寒さでは完全に枯れることはないだろうと思っていましたが、
ブルーベリーは枝の先に実がつくため、寒さにより枝先が枯れる「枝枯れ」により、収量が減ってしまうことを心配していました。
しかし、実際には、寒さによる枝枯れは、ごく一部にしか発生しませんでした。
花芽がほとんどない、徒長気味の枝先15cmほどが枯れることはあっても、充実した枝にしっかり花芽がついた枝はほぼ枯れることはありませんでした。
収量に影響はありませんでした。
とくに2021年度の冬は、寒さが厳しく、マイナス2桁の日も数日ありましたが、収量に影響はありませでした。
ラビットアイ系ブルーベリーを寒冷地で育てるメリット
全国的にブルーベリーが少ない時期に収穫できる
長野県中部地方の場合、6月下旬からハイブッシュ系の収穫がはじまり、8月上旬にはハイブッシュは終了。
その後、8月から9月にかけてラビットアイ系品種の収穫期となります。
8月から9月の時期、特に9月はノーザンハイブッシュ系が中心に栽培されているこの地方では、ブルーベリーそのものが少なくなるので、希少価値がでてきます。
さらに、この時期は全国的にも、ブルーベリーが少なくなってくる時期でもあります。
夏休みシーズン~秋口を中心に観光農園をオープンできる
8月の夏休みやお盆休みの頃にたくさん収穫できるため、
観光客などの動く時期に観光農園をオープンすることができます。
観光農園を運営するためには、大きなメリットになってきます。
8月下旬~9月になると、ブルーベリー狩りをやっている農園自体がほとんどなくなってくるので、
「ここはまだやっていたので、旅行で寄れて良かった。」というお客様もいました。
ラビットアイ系品種を寒冷地で育てるデメリット
晩生系の品種を導入しにくい
長野県でラビットアイ系の晩生品種を導入すると、熟期が来る頃に、秋が深まり、気温が下がってくるため、成熟する前に寒くなってしまう恐れがあります。
現在、どのくらいの品種まで可能なのか検証中のため、極晩生の品種の成熟が間に合うのかは、まだ不透明です。
遅霜のリスクがある
寒冷地では遅霜が発生する地域も多いと思います。
長野県安曇野市も5月の上旬、連休の前半くらいまでは、遅霜の恐れがあります。
この時期は、ラビットアイ系品種の花が咲き始めているので、遅霜により、花が減り、収量が減ってしまう可能性があります。
2021年は遅霜が断続的に発生したため、収量が減ってしまいました。
一方で、ブルーベリーの樹がある程度成長してきた、2022年からは、遅霜があっても影響を受けにくくなった印象です。
樹が成長して、地表部より高い位置に花をつけるようになってきたことも影響しているかもしれません。
花芽調整といって、大粒の実などをそろえるために、花芽を減らす作業をやる場合がありますが、
うちの農園では、ラビットアイ系の花芽の数は減らしません。
そのため、多い花芽は「予備花」として、遅霜対策にもなっています。
まとめ
長野県のような「寒冷地」でラビットアイ系ブルーベリーを育てること、は気象条件や品種によりますが、決して不可能なことではありません。
寒冷地はこれまで北部ハイブッシュ系の栽培が一般的になっていることが多いため、時期がずれることや差別化が容易になります。
晩生系の品種が選択できない可能性や遅霜のリスクといったデメリットはありますが、
気候に適した品種の検証、基本的に豊産生という特徴を活かして花芽を多く残すことでリスク分散できるのではないかと考えています。
そもそも、長野県安曇野市穂高地区のここ数年の年間平均気温12度を超えており、むしろ寒冷地とも言い難くなってきています。
地球の温暖化や猛暑への対策としても、ラビットアイ系ブルーベリーの導入は、有効になってくると思います。
●周辺地域で北部ハイブッシュ系が中心となっていることが多いため、収穫時期や味の特徴などの
面で差別化ができる。
●夏休み~秋口を中心とした観光農園の運営が可能
●晩生系の品種が選択できない可能性がある(検証中)
●遅霜のリスクがある
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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