脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
有機JAS認証を取得した「オーガニックブルーベリー」を栽培しています。
正直なところ、直売所などの販売は、私のビジネスモデル的にはけっこう苦手分野です。
私が、力を入れている「伝える」方法が限られるためです。
それでも、販売スタイルを工夫することで、時期よっては、月10万円以上の売上げになります。
今回は、「直売所販売で工夫していること」を書いてみました。
一年ほど前に書かせていただいた記事を、最近の情報も加えて、リライトしております。
直売所販売のメリットとデメリット
直売所は「販売委託」
農産物直売所は、様々なものがありますが、基本的に、販売店への小売りではなく「販売委託」という形態で運営されていることが多いようです。
ここでは、以下の形態の直売所を前提として書かせていただきたいと思います。
- 販売委託として直売所で販売する形態
- 販売額に応じた手数料(15~20%程度が多い)
- 出品の量、品目、出品の時期は出品者が決められ、ノルマ等は無い
ちなみに、産直のECサイト(通販サイト)は、これをそのままWEB上の移したようなものです。
私が販売している「食べチョク」((株)ビビット・ガーデン)もWEB上ではあるものの、基本的に同じスタイルです。
メリットは合間の販売にちょうどよい
直売所のメリットは、「縛られない」ということです。
私は、ブルーベリー観光農園と産直販売をメインにし、ブルーベリーの収量と、お客さんの数、産直販売の発送数のバランスをとりながら、収穫量を調整しています。
ところが、一時的にお客さんが少ないタイミングが生じることもあります。
ブルーベリーはそれとは関係なく熟していくので、適期に収穫し、販売するには、自分のタイミングで販売できる直売所は非常に助かります。
収穫適期を逃し、無駄にせずにすむからです。
私のように、小規模かつ多様な販売先に調整しながら販売している場合、隙間を埋めてくれるような販売先は非常に助かるものです。
冷凍という方法もありますが、保管場所も必要となることから、生果実で即販売できるのもありがたいです。
また、ブルーベリー以外の農産物も、ブルーベリーシーズン以外に販売できるのも、メリットです。
デメリットは「売れるとは限らない」
デメリットは、出品しても売れるとは限らない点です。
産直ECサイトであれば、発送日時を調整できるので、発送日に収穫することができますが、直売所はすでに収穫して置いておくので、売れなければ廃棄になる可能性があります。
また、他の出品者と競合が生じることがある点もデメリットです。
小売店では、通常、同じ品目の農産物で複数の仕入れ先のものをおくことは考えられませんが、
直売所販売では、例えば、ネギなら、いろいろな出品者のネギがあり、直売所無いでの「競合」が生じてしまいます。
また、採算度外視で、楽しみで出品している生産者も一定数いるため、全体として価格が低い方に引っ張られる場合もあります。
そのようなお買い得品も直売所の魅力とも言えますが、生産者全体の利益が下がりすぎるのも問題だとです。
これ以下には価格下げないという「最低制限価格」のようなものを、運営側で設定した方が、よいのではないかと思います。
私が直売所を主戦場にしない理由
前提として、私は直売所販売は、主戦場にはしていません。
理由は、単純に得意でない場所だからです。
私は小さな規模の生産者なので、リソースが限られています。
自分が得意なところを絞って、販売する、つまり「勝てるところで確実に勝つ」というスタイルをとっています。
また、私は、WEBサイト、SNSなどを通じて、その作物や栽培方法、作っている人などなど、伝えて、伝えて・・・という販売方法を得意としています。
そうやって、独自性を少しずつ作っていているため、伝える情報が限られる、お店でたまたまみかけた、という場所での販売は苦手です。
売所販売は、自分の強みが活かせない、メインにはできないという事情がありますが、前述の「合間の販売」をすることができるメリットが大きいため販売しています。
それでも、一工夫することで、月10万円以上の売り上げになり、それなりに収入になります。
「得意でない」直売所で売るための工夫
「確実に売れるもの」を販売する
直売所では「確実に売れるもの」だけを集中的に販売するようにしています。
マーケティングっぽく言えば、市場に必要なものを供給する「マーケット・イン」の発送です。
できたから、とりあげず売ってみようか・・・というのも、状況によっては必要な場合もありますが、基本的に「売れるものを出品する」という方針です。
新しく販売をするものであれば、仮説をたてて、少量をテスト販売してみて、よさそうなら増やす。
という形で出品するものを絞っています。
テストして売れることがわかったものもありますが、これまで売れなかったものも、正直たくさんあります。
大切なのは、「観察して」「仮説をたて」「試して」「検証する」という一連のプロセスです。
「嗜好的」な食品を販売する
顧客層にもよる部分はありますが、一般的に、人は必需品となる作物(米など)よりも、嗜好品のような作物(フルーツなど)の方が高単価で購入する傾向があります。
生活必需品は、なるべく安く、しかし、嗜好品は高単価であってもやむを得ないという感覚もあるのかもしれません。
そういった傾向のある作物、具体的にはフルーツや、野菜の中でもエダマメといったやや嗜好品的なものを中心に販売するようにしています。
私は、少量生産者ですので、単価が低い作物は、作業あたりの効率が悪いためです。
「長くおけるもの」を販売する
また、生鮮食品は、置いておく期間が限られますが、加工品などは、比較的長くおいておくことができます。
生産したハーブをドライにし、ハーブティーとして販売しています。
少なくなったら、出品し、かなり長期間販売することが可能です。
爆発的には売れませんが、少しずつ確実に売れていきます。
なお、ドライハーブの販売には、保健所への届出が必要になります。
ちなみに、国産のハーブ製品は、まだまだ少なく、製品化するのにノウハウや手間がかかるので、被ることが少ない商品でもあります。
「被らない」ようにポジションを明確にする
売れる確率を上げるために、基本的には、他の出品者と「被らない」ように作物、品種単位で、なるべくずらすという方法をとっています。
例えば、ブルーベリー、トマトやエダマメなどは、他の出品者と基本的に時期がずれるようにしています。
ただし、加温設備で時期をずらすということは、設備的がなく、経費もかかるため、少量生産者の私にはできません。
無理をすると食味も生産量も落ちるため、無理のない範囲で、主に品種と栽培方法で工夫しています。
変わった作物をつくるというよりは、メジャーな作物で、ほんのちょっと時期がずれるような工夫をしています。
果物や野菜については、保守的な人の方が多く、対面販売などでなければ、変わった作物はあまり売れないためです。
野球で例えるなら、ストライクゾーンを大きくはずさずに、ボール1個分だけずらすみたいなイメージです。
ナイヤガラブドウは、正直、けっこう美味しくできるのですが、県外者の知名度が低く、隣にシャインマスカットやナガノパープルがあるため、見劣りしてしまい、ほとんど売れませんでした。
また、被ってしまうと、単価が他の単価と比較されます。
直売所の中には、楽しみで出品していて、採算度外視のような価格で販売する人もいます。
被っているほど、単価がほかの出品者の影響を受けやすくなってしまいます。
また、有機JASの認証をとった作物も徐々に増やしているため、オーガニック農産物の部分での差別化も図っています。
これも「被らない」工夫です。
それでもなるべく「伝える」
ボリュームは制限されてしまいますが、シールなどで、なるべく「伝える」工夫もしています。
イラストや説明も可能なかぎりしています。
差がわかりにくものは見た目で、いわゆるパケ買いをすることも多いので、最低でも小綺麗に、そして、できれば素敵なパッケージやシールに、といった工夫もしています。
同じ品目でも「売り場面積」は増やせる
売れているものがあっても、その直売所で一日の来店者には限りがあります。
そのような場合には、直売所を複数にするのも一つの方法です。
2024年シーズンからは、直売所を2か所にしたことで、同時期に売れる量をさらに増やすことができました。
売上を上げるには、単純に、直売所を増やす、つまりトータルの「売り場面積」を増やすことでも実現することができます。
しかし、直売所の立地条件などによっては、移動に労力がかかるので、立地条件も考慮する必要があります。
2024年に追加した直売所は、少し離れた場所にあったため、そこを利用する場合は、確実に売り切れる時期に、売り切れる量のみ出品し、回収やチェックの労力が極力かからないように工夫しました。
まとめ
情報量が限られる直売所は、私にとっては「苦手な場所」です。
そのため、現状では、合間の販売、サブの収入としています。
しかし、苦手な直売所でも品目、時期、有機認証などで自分のポジションを工夫することで、それなりに売上を上げることができます。
また、いろいろなことを試せるため、おもしろい場所とも言えます。
そういう意味でも直売所には大変感謝しております。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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