ブルーベリー栽培では、草との付き合い方が重要です。
私はブルーベリーを「草生栽培」で育てています。
果樹では比較的多く見られる下草を活かす栽培方法です。
一般的には雑草は敵と考えられがちですが、実際には草にも大切な役割があります。
- 害虫の天敵を増やす
- 地温を安定させる
- 乾燥を防ぐ
- 刈草が肥料になる
- 微生物の住処になる
近年は夏の高温化が進んでいますが、草による被覆はその対策としても非常に有効です。
当園では植え付け時を除き、ほとんど資材を使用していません。
草がマルチングとなり、肥料となり、微生物や天敵昆虫の力によって農薬にも頼らず栽培しています。
しかし、だからといって放置しているわけではありません。
草を活かすためには、定期的な草刈りが欠かせません。

ただし重要なのは、
「いつ刈るか」
「何を刈るか」
です。
漫然と全部刈るのではなく、草の生育ステージを観察しながら管理しています。
春の草刈り(4月末〜5月上旬)

4月になると、ハコベやヒメオドリコソウなどの春草が花を咲かせます。
こうした背丈の低い草は基本的に残します。
ブルーベリーの生育に影響がなく、そのまま枯れてくれます。
さらに、たくさん咲く花は、寄生バチなど多くの天敵を呼びこんでくれることも期待できるからです。
一方で、
- イネ科牧草
- ヒメジオン
- ハルジョオン
など、これから大きく伸びようとする草だけを選んで刈ります。
刈払い機や大鎌を使いながら、
「全部刈る」のではなく、
「凹凸を均す」
ようなイメージです。

この時期に一度刈ると、本来ならさらに伸びるはずだった草は、ある程度の高さで妥協して再び花を咲かせます。
結果として、
- ブルーベリーの受粉
- 新梢の伸長
への影響が少なくなります。
新梢への影響はブルーベリーの株が小さい場合であり、成木になってからは受粉に若干影響があるように思います。
また、花を咲かせた春草はその後あまり伸びなくなるため、しばらく管理が楽になります。
最近は5月でも真夏のような暑さになることがあります。
そのため、この時期は刈り過ぎないことも重要です。
初夏(梅雨入り前)の草刈り(5月末〜6月上旬)

梅雨入り前になると、気温上昇とともに夏草が動き始めます。
その前にもう一度、春草を整えます。
ここでも基本は選び刈りです。
花を終えつつあるイネ科牧草などを中心に刈りながら、ハコベなどの低い草は残します。

乗用モアで全面的に刈ってしまうと、春草が一気になくなり、空いた場所へ夏草が侵入しやすくなります。
そのため、この時期も刈払い機や大鎌を使いながら、必要な部分だけを整えています。
パワーのある機械は、刈るというよりも、粉砕してしまうため、刈草の分解も速いように思います。
刈草は、夏草を抑えるので、なるべく分解に時間がかかった方が有利です。
梅雨時期の草刈り(6月〜7月)

春草が枯れ始めると、いよいよ夏草の季節です。
この時期は管理の考え方が変わります。
草刈り頻度は2週間以内。
乗用モアや刈払い機を使いながら素早く刈ります。
まさにスピード勝負です。

この時期に発生する大量の刈草は、
- 強力な草マルチ
- 夏の乾燥防止
- 土壌有機物の供給
として働きます。

大量のバイオマスが土を育ててくれる時期でもあります。
また、草マルチが厚くなることで、次に生えてくる草の本数密度も減っていきます。
夏の草刈り(8月〜9月)

真夏になると草の勢いも少し落ち着きます。
ブルーベリーの株元周辺は20〜30cm程度を目安に、大鎌などで軽く刈ります。
草を残すことで、
- 保湿
- 地温上昇の抑制
が期待できます。
雨が少ない時にも、草につく朝露が土壌に供給される効果も期待できます。
さらに、梅雨時期に蓄積した草マルチの効果もあり、この頃には草の密度が下がっているため、大鎌での作業もしやすくなっています。
ただし、観光農園としてお客様が歩く通路については、快適性を考慮し、乗用モアで短く刈っています。

なお、大鎌については、過去に月刊現代農業(農文協)で取り上げていただいたことがあります。
草を刈らない時期(10月〜翌年3月)

9月末頃になると、夏草も春草と同じように花を咲かせようとします。
この段階で一度刈ると、やはりほどほどの高さで妥協して開花します。
当園では観光農園の営業が9月中旬頃までのため、9月下旬からは草刈りを終了します。
収穫は少し続きますが、作業自体への影響はなくなります。
草はそのまま枯れ、かなり厚いマルチング層となって冬を迎えます。
晩秋の黄金色の草マルチは圧巻です。
この枯れ草がブルーベリーの根を寒さから守ってくれます。
年間の草刈りスケジュール

4月
- 1回
- 強度弱め
- 選び刈り
- 下草花期
5月
- 1回
- 強度弱め
- 選び刈り
- 下草花期
6月
- 2〜3回程度
- 強度強め
- 全刈り
7月
- 2〜3回程度
- 強度強め
- 全刈り
8月
- 2回程度
- 強度弱め
- 通路のみ全刈り
- 株周りは弱め
9月
- 2回程度
- 強度弱め
- 通路のみ全刈り
- 株周りは弱め
- 下草花期
合計回数は、およそ12回程度、予備作業を考慮しても、少なくとも15回以内だと思われます。
期間としても4月下旬~9月下旬までなので、5~6カ月程となります。
草を観察すると見えてくること

植物が背を高くする理由は主に二つです。
ひとつは花を咲かせるため。
もうひとつは他の植物との競争に勝つためです。
つまり、草刈りのタイミングは、草の生育ステージに合わせることが重要になります。
また、草が生えられる面積には限りがあります。
春草がしっかり生えている場所では、夏草は入り込みにくくなります。
自然を観察すると、植物が生育できる場所は基本的に何かで覆われています。
多くは植生か落葉落枝などの有機物です。
裸地化している場所は、崩壊地や岩場など特殊な環境だけです。
だからこそ、扱いやすい春草や刈草で地面を覆いながら、夏草とも上手に付き合っていくことが大切だと考えています。
草を活かすことは、放置することではない

パワーのある機械で定期的に全面草刈りをした方が、短期的には早い場合もあるでしょう。
しかし、草の生育ステージに合わせて管理すると、必要な作業量そのものを減らすことができます。
特に春から梅雨入り前までは、全部刈らなくても見た目を整えることができます。
その結果、当園の年間燃料代は約2万円程度です。
近年の燃料価格高騰や国際情勢の変化の影響も比較的小さく抑えられています。
私は、
「草を敵にしない」
という考え方が好きです。
ただし、それは管理をしない言い訳ではありません。
草を活かす栽培とは、
放置でもなく、
芝生のように人工的に整え続けることでもなく、
自然をよく観察し、
明確な意図を持ちながら、
下草と共生していくことなのだと思います。
新規就農や低コスト農業を目指す方へ

農業経営では、「何を買うか」よりも「何を観察するか」が大切な場面があります。
設備や資材に頼る前に、まず自然の仕組みを理解する。
そうすることで、コストを抑えながら持続可能な栽培体系を作ることも可能になります。
当ブログでは、こうした低コストで持続可能な農業経営について発信しています。
新規就農やブルーベリー栽培を検討している方は、お気軽にご相談ください。



