脱サラ元公務員、現在はブルーベリー&パーマカルチャーの農園をやっています 神崎辰哉(かんざきたつや(@ttykanz) )です。
農園の名前は長野県安曇野市、北アルプスの山麓で「ブルーベリーの森あづみの」といいます。
有機JAS認証を取得した「オーガニックブルーベリー」を栽培しています。
少し前に、知り合いに頼まれて、野沢菜の収穫と漬物づくりの手伝いをしていました。
そのときに、一緒に作業していた人に言われて何気ない言葉が少し不思議に思うことがありました。
「私たち農家は〇〇なんだよ。」
「農家っていうのはね・・・。」
とう説明を何回かいただいたのですが、「なるほど。なるほど。」と聞いてはいたものの。
「多分、私も農家のような気がするのだけれども・・・?」という疑問がなんとなくありました。
しかしながら、私は農業で生計をたてているのだけども、実は「農家」ってそもそも何だか知らないということに気が付きました。
「農家とは」について、少し調べてみることにしました。
農家とは
「農家」とは辞書などを引くと、以下のような記述がされています
①農業を生計の基本とする家。農戸。
コトバンク:https://kotobank.jp/word/%E8%BE%B2%E5%AE%B6-111818
② 中国、戦国時代の諸子百家の一つ。農政に関することを説くもの。
農業で生計をたてている世帯のこと。
また、その家屋そのものを指す場合。
特殊な意味として、古代中国の思想の流派の一つという意味もあるようです。
現在でも、芸術家、書道家など、専門的な職業に「家」がつくのは、こういった流れなのかもしれません。
農業も専門家という意味もあるのかもなあ・・・と考えさせられました。
日本語的には「主に農業で生計を立てている世帯」を意味します。
私は、農業で生計を立てているため、この定義なら「農家」と言えそうです。
あれ?兼業農家は?という疑問もありますが…
いろいろな農家の定義
辞書では、日本語の意味が解釈によって変わってしまうので、
法制度などで前述の「生活の基本とする」の解釈などが具体的に定義されているのかを確認してみました。
農林水産省の農林業センサスでの農家
「農林業センサス」は、簡単に言ってしまえば、5年ごとに行う農業と林業に関する農林水産省の調査による統計データです。
「農林業センサス」では、農家に相当する用語として「農業経営体」という用語が使われています。
農業経営体とは、以下の(1)または(2)のいずれかの事業を営むもの(個人又は団体、法人)と定義されています。
(1)経営耕地面積が30a以上の規模の農業
(2)農作物の作付面積又は栽培面積、家畜の飼養頭羽数又は出荷羽数、その他の事業の規模が次の農林業経営体の基準以上の農業
①露地野菜作付面積15a
②施設野菜栽培面積350㎡
③果樹栽培面積10a
④露地花き栽培面積10a
⑤施設花き栽培面積250㎡
⑥搾乳牛飼養頭数1頭
⑦肥育牛飼養頭数1頭
⑧豚飼養頭数15頭
⑨採卵鶏飼養羽数150羽
⑩ブロイラー年間出荷羽数1,000羽
⑪その他調査期日前1年間における農業生産物の総販売額50万円に相当する事業の規模
おもしろいと思ったのは、以外に小規模なことと、販売するかどうかは問わない点です。
農林業センサスの定義であれば、私は(1)に該当する(約90a)なので、農業経営体≒農家に該当することになるようです。
農地法の農家
農地法は、農地の保全や適切な利用等を目的としているため、農地の定義はありますが、
「農家」が何であるかという直接的な定義がされていません。
一方で、農地法第3条における、農地の売買や賃貸などの権利移転は、農業委員会の許可が必要となり、
原則として農地を適正に管理し効率的に営むものしか許可を受けることができません。
つまり、農地法では、「農業を常時、効率的に営むもの」≒「農家」しか農地の売ったり買ったりを行うことができないことを規定していると解釈できます。
たまにSNSなどで「農家の資格」がある、ないと表現している方がいて、正直私には何のことだかよくわからなかったのですが、
もしかしたら、このことを言っているのかもしれません。
農地の売買等の要件を満たすもの≒農家と言えそうです。
※これ以外に、農業経営基盤強化促進法という別の法律で利用権設定という方法で農地を貸借することは可能ですが、制度の主旨が異なるため、ここでは省力します。
売買契約など土地の権利関係の一般的に必要な調整が整っていることは当然のことですが、
農地法の観点からは、農地の権利移転などが許可に要件は以下のとおりです。
- 農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うことができる(機械、労働力、技術など)
- 耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められる(具体的には年間150日以上従事)
- 周辺の地域における農地等の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないと認められる(地域で既に行われている農業に支障のない事業であること)
以前は、耕作地の下限面積(地域により30a~50a)がありましたが、2023年3月の改正でなくなりました。
もし農地法3条の許可を取る場合でも、要件は全て満たしており、農地法第三条の権利移転などができる事業者と言えます。
と、いうか普通に経済栽培していれば、ほとんどの場合、要件を満たすと思われます。
農地法での定義でも私はおそらく農家であると言えます。
(参考)
- 農地法
- 農地法施行規則
- 農地法関係事務に係る処理基準について(最終改正令和5年8月29日5経営第1 2 8 9 号 農林水産事務次官通知)
その他慣習的?農家
ここまで調べてみて、定義上は、どうやっても私は「農家」になってしまうような気がしてきました。
あと、思いあたることは・・・「慣習」とか「イメージ」です。
「この土地で昔(少なくとも50年以上前?)から農地をもっている」
とか
「家業として家族総出でやっている」
とか、そのため
「周りのみんなが農家だと認識している」
そういった、漠然としたものかもしれません。
人によってはそういう人が農家だと思っている可能性があります。
それならば、私は、私の代から始めた、わずか5年農業をやっている個人なので、この要件は満たしていないと思います。
これならば、納得です。
まとめ
私自身は、農家の人に、農家だと言われても、農家でないと言われても、
普通に平和に農業をやって生活しているので、正直どっちでもいいんですが(笑)
本当に単純に、興味があったので調べてみました。
一連の法制度などで扱われる定義では、私は「農家」だという認識はあっていそうです。
しかし、検討していく過程で、生粋の農家さんにとっては家や家業、ルーツみたいな意味をもっている可能性もあるのかもしれないと感じました。
もし、生粋の生まれながらの農家さんが「自分たちは農家だ」という、誇りのようなものが、原点にあるのであれば、それもまた素晴らしいことなのではないかと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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