【林業的に農業を見てみた】脱サラ元公務員のひきよせ農業vol.85~ブルーベリー&自然栽培

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脱サラ、元地方公務員、去年まで某農業法人にてブルーベリーの栽培をやっておりました。かんざきたつや(@ttykanz)、36歳です。

 

詳しいプロフィールなどは、下記のプロフィールページをご覧ください。

 ⇒かんざきたつやのプロフィールページを見る

 

 現在は、農業法人を退職し、独立起業をしており、子どもたちの笑顔あふれる、「やすらぎと思い出づくりをそっとお手伝いするブルーベリー農園」を創るべく、日々まい進しております。

 脱サラ(脱公務員)の経緯や、農業、そしてブルーベリー観光農園を志した経緯、やりたい農園のコンセプトなどについては、以下の過去記事をご覧ください。

 

もう少しで農地が決まります。

ご協力いただいております関係者の方々、本当にありがとうございます。

こうご期待☆

    

 私は、前々職で、林業関係の技術系職員をしていました。

行政の仕事なので、設計、企画調整や事務処理が多く、実際に現場に出て、木を切ったりすることは少なかったのですが

現場の方に教わったり、技術や理論などを学びながら仕事をしてきました。

 

農業も徐々に勉強してきていることもあり、

今回は、そういった視点からも農業を見てみようと思いました。

 

 

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林業的に農業を見てみた

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植物を育てる目的

林業と農業は両方とも「植物を育てる」仕事です。

 

林業は、木質資源(木材やパルプ材やバイオマス燃料など)を得ることを目的としています。(自然災害の防止などの公益的機能も言われていますが、ここでは、生業としての目的を指します)

建築資材としての需要が高い時代の頃に発展した技術体系が継承されてきているため、基本的には良質な木材となる丸太を生産する技術が中心となっています。

ここでいう「良質」とは、節(枝が生えていた跡)が少なく、なるべく円柱状で太く長く、利用できる部分が多い丸太になる木を意味します。

 

一方、農業は、人間が食べる食材や家畜の飼料などを得ることを目的としています。

多くの場合、栄養価や食味、見た目などが優れる作物を多く収穫することを目標としています。

近年においては、食の安全性や健康機能の維持増進としての機能も重視されてきているように思えます。

 

植え方

林業では、苗畑で2~3年程度育ててから、山に植えます。

その時、「地拵え」(じごしらえ)という、植えるのに邪魔になる木や草を取り除いたり整地する作業が行われます。

基本的に肥料は用いず、多くの場合「裸苗」(はだかなえ)とよばれる、根がむき出しの状態の苗を植穴をほってそのまま植えます。

 

なお、「ブルーベリーをつくりこなす」(江澤貞雄、農文協)の江澤貞雄氏の提唱する「ど根性栽培」は、極めて林業的な植え方をしています。

以前、お会いした際に、ご本人も、農業雑誌よりも林業雑誌からの執筆依頼が多いとおっしゃっていました。

 

ブルーベリーをつくりこなす: 高糖度,大粒多収

ブルーベリーをつくりこなす: 高糖度,大粒多収

 

  

最近は「コンテナ苗」と呼ばれる、特殊な容器でポット育苗した土付きの苗が出てきており、一度自分でも植えたことがありますが、運ぶ時に重すぎて、本当に山の斜面で使うことを想定しているのか疑問でした。

国有林のような林内の路網が整備されてる前提でないととても重労働です。

 

農業(野菜)の場合、農法や作物などによっても若干異なると思いますが

肥料や堆肥を入れて耕運するなどの植え付け前の準備をした後(微生物の保全などのため、耕運などをしない農法もあります)1~2カ月程度育てた苗を植えたり、直接種をまきます。

 

なぜ林業の場合は肥料がいらないのでしょう?

山林の場合、落葉などの有機物が永年にわたり堆積し、微生物の分解等の循環により、植物に必要な栄養が賄われていると考えれているようです。

先人たちも、自然をよく観察し、経験的にも不要なことがわかっていたのでしょう。

 

一方、近代的な農業では、収穫等により、栄養分が畑から持ち出されるため、その分を補うという前提で、肥料などが投入されてきている場合が多いようです。

肥料の多投入などによる病害虫害や土壌汚染などの問題が発生しており、自然状態に近い環境を再現することで、肥料を必要としないあるいは最小源とする方法が注目されています。

 

自然農法や無肥料栽培などは、この点で林業と農業の接点がでてきているように思えます。

 

栽培管理

(1)「下刈」と「除草」

林業の場合、植えてから5~7年程度、苗木の生育を妨害する草や木を除去する「下刈」(したがり)と呼ばれる、作業を行います。

 

農業の場合、苗などの生育が阻害される雑草を「除草」する場合が多いです。

農業の場合、「雑草は敵」と考えている方も多く、土がむき出しの状態が「きれいな畑」とされることも多いです。

 

自然状態の山地で草が生えていない場所は、岩石地か崩壊地、沢沿いといった、かく乱が継続されている場所くらいしかありません。地面むきだしの裸地は自然状態ではかなり不自然なものだと言えます。

 

林業の場合、植えた木がほかの雑木や草などに生育を阻害されない程度まで成長した後は、雑木や草は、土壌の浸食防止などの役割があるため、作業に支障がない限り、雑木や草などは基本的に残します。

 

下刈は7月~8月の夏の暑い時期の重労働であるため、そんなに長期間やってられないという労働の事情もあるかもしれませんが、周辺環境を保全しながら収穫物を守っていくという、自然のしくみを観察した先人たちの知恵なのかもしれません。

 

また、以前は、全てのかん木などを刈り取る「全刈(ぜんがり)」が主流でしたが、現在では、かん木類などを残す手法も注目されています。

下刈りが必要な期間でも、冬場のシカなどによる食害を防ぐため、列状に刈り取る「筋刈(すじがり)」や苗木の周辺だけを刈り取る「坪刈(つぼがり)」などと呼ばれています。

かん木などを周辺に残すことで、植林した木がシカなどにより集中的に食害を受けるのを防止するためです。

 

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農業でも、雑草の生える空間を残し、集中的に作物が食害を受けるのを防止することがあるようです。

そして、雑草があることで害虫の天敵の住処になる。微生物が豊かになる。排水機能が向上する。

光合成により栄養分が蓄積されるといったメリットにも焦点があたってきています。

農業においても雑草をできるだけ残したり利用することも見直されてきています。

 

しかし、どちらも従来の方法に比べると植生管理が複雑になり、効率性が低下する恐れがあるという点は課題だと思います。

(2)「間伐」と「間引き」

林業の場合植えてから20~30年程度たつと、「間伐(かんばつ」とよばれる、間引きのための伐採を行います。

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間伐をしないと、相互に競争して、ひょろ長い木ばかりになってしまうため、太い根のはったがっしりとした木に育てるために行う作業です。

 

木の葉っぱがある部分を樹冠(じゅかん)といいます。

樹冠を上からみたときの面積を、木が生えている面積で割った数値を樹冠疎密度(じゅかんそみつど)といいます。

間伐はだいたい樹冠疎密度が0.8、すなわち木が生えている面積の80%に達したことが目安に行われます。

これは、だいた隣の木と枝と枝が触れたときに相当しますので、

隣と枝がぶつかりそうだな・・・という時期に間伐をします。

 

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農業の場合も、種をまく場合は、数粒撒いて、徐々に「間引き」ながら、本数を減らしていきます。

 

林業と同じように相互の競争により、ひょろ長い不健康な作物とならないように、適切な時期に行います。

 

最終本数より多く植える目的として

  • 枯死(発芽不良)などのリスクが分散できる。
  • 成長初期に本数が多いことで、成長がそろったり、風害などの外部ストレスに耐えやすくなる 

といったことが共通しています。

 

それ以外には、林業の場合は、それ以外にも、

一定の密度を保ちながら、育てることで、太さがそろった丸太が収穫しやすくなる

といったことも目的としています。

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間伐も間引きも適切な時期に行わないと、後々まで、影響がでてしまい、なかなかとりもどせないことが多いと思われます。

 

以前、野菜苗を育てていた際に、間引くのが遅くなってしまい、ひょろ長い苗ができてしまいました。

間引いても、節間(枝と枝の間の距離)が間のびしたような苗になってしまい、成長しても、しばらくはその影響をうけてひょろ長い形状になり、長らく健康状態が悪くなりました。

 

間伐が遅れた場合も、樹冠が枯れあがってしまったものが取り戻せない場合が多く、間伐を行った場合でも、成長量が回復がどれほど期待できるのか、長期的なスパンでみなければ、はっきりとはわかりません。

 

「自然の力で淘汰されるのでは?」

 

といった疑問を持たれた方もいるかもしれません。

 

正解でもあり間違いでもあります。

自然の状態であれば、バランスよく淘汰されますが、

人工林の環境も畑の環境も、自然状態ではなく人工的に作られた環境です。

 

林業であれば、例えば10,000m2に3,000本程度の苗を植えて、徐々に本数を減らしながら、植えた木を維持管理していきます。

 

自然状態の広葉樹林では10,000m2に10,000本程度の実生が生えてくると言われていますが、成長段階で、激しく淘汰されていき、ある程度成長した大きさで、同じ年齢の木が高密度で生えていることは、おそらくありません

 

すでに人工的な環境下において、不自然な状態をつくりだしていることから、手を加えないと、それぞれの成長を阻害し、栽培している目的が達成できないことになります。

 

この点は、林業も農業も非常によく似ていると思います。

 

政策等の歴史

農業も林業も時代の変遷など様々な要因でビジネスとして成り立たなくなってしまったいる状況があった場合でも(もちろん、すべてがそうな訳ではありません。)

延命措置のような形で多額の国補助金が投入されてきた歴史が見受けられます。

林業も農業も昨今の厳しい情勢などを考えると、産業を守るべき補助金が長期的には産業の弱体化を助長する場合があるように思えます。

 

行政の補助金などは長期的なビジョンに基づく効果的な使い方をすれば、産業を支えることができるものです。

しかし、一方で、政治家や官僚の権威性としての使われ方に陥る恐れがあることは、産業全般に言えるかもしれません。

 

 まとめ

ざっくりとですが、林業と農業の共通点や違いなど、思いつくままに書いてみました。

  

林業も農業も、人工的な環境をつくりつつも、自然のしくみを利用しながら、収穫物という目的を達成するために努力が続けられてきています。

しかし、収穫物という特定の目的のみ注目され、そこを最適化しようとした結果、自然環境との不調和が発生しやすくなっていると言えます。

 

産業の構造的な問題も含め、双方とも、かなり前から転換期にきていると思います。

 

 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

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 (林業を舞台とした映画です。なかなか面白かったです。↓下は原作です。)

  

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